瑞希の待ち合わせ
土曜日。今日は学校がない。
俺は昼前に家を出た。
出掛けに妹の祐実に足止めを食らった。
「兄さん、どこ行くの?」
「ちょっと約束があってな」
「私も行く」
「いや、来んなよ」
何で兄の約束に妹がついて来るんだ。
祐実は不安そうな顔をしている。何か嫌な予感てもするのだろうか?
そんな不安になるようなことはない。今日は睦瑞希に会うだけだ。
ハンカチを返したいから、土曜日に会いたい。と、瑞希からメールが来た。
学校で祐実に渡したくれたらいい。と返したが、お礼も言いたいからと、引かなかった。
お礼を言うのはこっちだろ、と思った。俺が礼を言うなら、やはり会わないとダメか。
約束の時間が昼前なのも気になる。ハンカチを渡して終わりとするつもりがないのは見え見えだ。
また、生まれ変わりとかの意味のわからない話を聞かされるのか。
俺はうんざりしたが、行かないわけにはいかないとも思った。
そうなると、余計に祐実は連れて行けない。祐実が怒り出すのは目に見えている。
だから祐実には、瑞希と会うことは言わなかった。
「兄さんのバカ! もう帰ってくんな!」と送り出された。
どうやら誰と会うか気付いてるらしい。
瑞希との約束の場所に30分前に着いた。
彼女なら約束の時間より早く来ると思ったから。
駅の改札付近、約束の11時より30分早い、10時30分。
既に瑞希は来ていた。
俺が来るであろう方向をずっと見ていたのか、すぐに俺を見つける。結構離れているのに、小走りで近づいてくる。
「お待ちしてました! ご主人様!」そう言って俺に抱きついてきた。
マジか……。
それほど大きくはない地方の街。主要な施設は郊外型が多いが、それでも人通りはある程度ある。
道行く人が驚いたように俺たちを見る。
俺も驚いたわ。
まさか人前でもやらかすとは思わなかった。
「ご主人様はやめろ。あと抱きつくな」
彼女を引きはなそうと肩を押すが、俺の胸に顔を埋めたまま離れない。結構背が低い。祐実や結衣より背が低いようだ。小学生でも通るかも。
「ごめん。マジで離れて。通報される」二人とも私服だ。高校生男子ともなると、私服だと大人に見えることもある。それが小学生にもみえる女の子と街中で抱きついてるとか。マジでヤバイ。
彼女はしばらくしてから、名残惜しそうに俺から離れた。不安そうな表情。
「ハンカチを返したいんだよね?」俺は用件を催促する。
彼女は傷付いた表情を浮かべ、ポシェットから袋を取り出す。わざわざラッピングしたらしい。
両手で袋を差し出す。
俺はそれを受けとる。
「わざわざありがとう。この間の事も感謝している。ありがとう」
さて、用件もすんだし帰っていいか?
彼女は泣きそうな顔をしている。
参った。
「昼御飯でも食べてく? おごるよ?」
彼女はとたんに嬉しそうな笑顔になる。
バカかな、俺。




