FPS カスタムマッチ
あれからランクマッチを何度か回した。
岸田洋は新要素に対応できている。俺と吉川結衣はまあまあだ。
プレイヤーネームで呼びあうことにしているので、打ち解けるのが早い。
岸田くんが、いつまでも俺に対して敬語なのが気になる。
それに比べて、結衣が一瞬で俺にタメ口になったのはちょとだけ気になる。まあ、いいんだけど。
しばらくすると妹の祐実が部屋に入ってきた。手にノートパソコンを持っている。
「私もやる」俺の隣にパソを置いて、スリープを解除した。
もうひとつのイスを持ってきて隣に座る。よく祐実が部屋に入り浸るので、祐実用のイスを常備していた。
「チュートリアル終わらせたから」
フレンド申請をして、ボイスチャットを4人でつなぐ。
妹のプレイヤーネームは「YUMI」だった。
「祐実も本名かよ」
「よろしく、ユミ」岸田くんが挨拶する。
「よろしく、……ユミ」結衣が少し言いにくそうに挨拶する。
中の人を知ってると、呼び捨てはしにくいよな。
「おう、よろしくな」祐実は慣れたものだ。
「4人じゃできないわよ?」結衣が言う。このゲームは3人で1チームを作る。
「カスタムすればいいだろ。2対2な」と祐実。
「ランクポイントつかないけどいいかな?」俺は二人に確認をとる。
「いいですよ」
「りよーかい」
祐実は当たり前のように、俺と祐実のペア、岸田くんと結衣のペアに分けた。
結果は、まあ、そんなもんだ。経験者の岸田くんに勝てるわけがない。
「兄さん!兄さん! 助けて! やぁん、死んじゃう! 」祐実が俺の隣で楽しそうだ。リアル音声とボイチャ音声のダブルで聞こえてくる。
仲間内の対戦なので4人でボイチャを繋げたままだ。
ヘッドホンの向こうで、笑いをこらえる男女の声が小さく聞こえた。
11時前に終わることにした。中学生にテッペン、つまり12時を越えてゲームをさせるわけにはいかない。俺は別にいいんだけどね。
「ユミ、明日一緒にお弁当食べない?」終わってから待機場で結衣が祐実を誘った。
「はあ? 何でお前と弁当食べんだよ」
「だって、学校一の美少女と友達って、マウントとれるじゃん」
「宇宙一な」俺はすかさず訂正する。
「あ、はい」
「昨日よりランクが上がってる……」岸田くんが呟く。
「ヨウ、妹さん借りてもいいよね?」
「いいよ」
「はぁ? 何かってに決めてんだよ。ふざけんな!」
「じゃあ、教室まで迎えにきてね。呼び出されるとこみんなに見せつけるから」
このゲームで、結衣は祐実の本質がわかったみたいだ。口は悪いがただのお人好しだと。
そして、俺が許可したなら祐実はその通りにする。祐実は了承していないが、明日は一緒に弁当を食べることに決定している。
「ヒロも一緒に食べない?」結衣は岸田くんも誘う。今度は少し不安そうに。
「ん……。明日も学校は休むかな……」
「そう……」
「行きたくないなら、行かなくていい」俺は口を挟んだ。




