委員長は頭をナデナデしてくる
「洋介。昨日はごめん」
教室で幼馴染みの三塚瑠璃が声をかけてきた。朝の授業が始まる前。
「いきなり貧血で倒れるからビックリしたよ」
昨日の事を、祐実はおばさんにそう説明したらしい。瑠璃は悪霊に取り憑かれている間の事を覚えていない。いつもの事だけど。
「なんかよく倒れるのよね」
うん。よく憑かれるよね。
「でも昨日は何してたの? 抜き身の短刀持って走って来るなんて、驚くわよ」
貧血で倒れたのは俺の責にしたいのか? いやまあ、俺の失態が原因だけど。
「祐実ちゃんも、顔にアザ作ってるし」
祐実は、瑠璃の意識が戻るまでついていたのか。
「洋介もあばら骨、ヒビ入ってるし」
え? 俺のあばら骨、ヒビ入ってるの? 見ただけでわかるの?
「気付いてなかった」どうりで何か痛いと思っていたんだ。咳とかすると。
俺も祐実も瑠璃にやられたんだけどね。
「あー、祐実と格闘技の練習してたんだ」
「短刀で?」
「刃引きだから」嘘なんだけど。真剣だね。
「何の練習してるのよ」
「徒手奪刀?」真剣白羽取りとかの事。
「怪我するほどの、危ないことしちゃダメよ?」
瑠璃が強すぎるのが悪いんだと思うな。言えないけど。
瑠璃がじっと見てくる。返事待ちか。
「うん、気を付ける」
「気を付けてね」そう言って彼女は俺の頭をなでた。
「やめろよ」彼女の手から逃れる。
だから、弟扱いはやめてくれ。
「格闘技するなら一緒にする? 教えようか?」
「瑠璃姉、強すぎるから遠慮しとく」
「えー、やろうよー」
嫌だよ。
「おい、何やってんだよ」不機嫌な声が聞こえる。
いつの間にか友人の飯島勇人が来ていた。
「「おはよう、勇人」」俺と瑠璃は揃って挨拶した。
「おはよう、委員長、洋介」勇人がジト目をして挨拶を返す。
「なあ、やっぱ委員長と付き合ってるんじゃないのか?」
「付き合ってないって」
「そうか?」そう言って、勇人はクラス委員長の瑠璃を見る。
「ええ、付き合ってないわよ」瑠璃は微笑んでそう答えた。
勇人は納得いかない顔をしている。
少し雑談をしてから瑠璃は自分の席に戻った。
勇人も自分の席、といっても洋介の後ろの席に座る。
「なあ、何で付き合わないんだ?」
「何でって、瑠璃は家が隣だから仲良くしてもらっているだけだよ」
「お前、マジで言ってるの? 普通頭撫でたりするか?」
しないか? 少し考える。そういえば昨日、泣いている睦瑞希の頭を撫でたような気がする。何でだ?
うん、泣いている小さい子供をあやすためだな。
「弟扱いしてるだけだろ」
「いやいや、お前がそう思ってるだけだろ。鈍感か?」
「いや、瑠璃も俺の事弟みたいだと言ってるぞ?」
「ホントに?」
「前にそんなニアンスのこと言ってた」
勇人は呆れた顔をした。
「委員長、メンドクセー」




