FPSは遊びじゃない
「高坂さん、彼女を救ってくれてありがとうございます」
日の暮れた公園。俺の隣で岸田洋はそう言った。
「話してくれてありがとう」俺はそう言いながらも、いくつか追加で聞き取った。悪霊となった人の名前とか、無くなった場所とか。
彼は言いづらかったので、言わなかったのだろうが、ちゃんとお祭りするためには必要なことだ。
「彼女は救う。大丈夫、俺はこういうの得意なんだ」
「はい。お願いします」
でも彼は誰が救えるのだろうか。
俺は目線を上げて、公園の反対側のベンチに座る吉川結衣を見た。
薄明かるい街灯の中、彼女は不安気にこちらを見ている。
俺は手を上げた。
彼女は俺の意図を理解して、小走りで近付いてくる。
俺は立ち上がって彼女を出迎えた。
彼女は岸田くんの前に立って、やはり不安気に彼と俺を見比べる。彼女は無言のまま。何を言ったら良いのか、わからないのだろう。
「待たせてごめんね、吉川さん」
結衣は俺を見てから、無言で岸田くんに視線を移す。
岸田くんは座ったまま、うつ向いていた。
「岸田くん、大丈夫?」彼女は労るように優しく声をかける。
彼は返事をしない。
「吉川さん。今こそ僕の助言を聞き入れるときじゃないか?」
「え?」結衣は覚えてないようだ。
「昨日、言っただろ?」
結衣は、あっ、て顔をする。「今ですか?」ジト目をされた。
そんな雰囲気ではないよな。
ごめん。霊を救うのは得意なんだが、人間を救うのは苦手なんだ。
「何、ニヤニヤしてるんですか?」
俺は彼女に近づき耳打ちする。「弱ってるところにつけこむのが告白の秘訣だ」
「うっわ」ゴミを見るような目で見られた。
結衣は少し考えてから、「岸田くん」と呼び掛ける。
岸田くんはうつ向いたまま。
「岸田くん、好きです! 付き合って!」結衣は目をぎゅっとつむって、そう叫んだ。
結局、言うんじゃないか。
岸田くんは顔を上げて、無感情な目で彼女を見る。
彼女はびくっとした。
「吉川さん。僕は君の知っている僕じゃない。君が知っているのは、あの人の演じていた僕だ」
結衣は返事ができない。
「吉川さんも見てたよね。僕についていた人を」
結衣は、あの光景を思い出したのか、顔を青ざめる。
「僕が怖くないの?」
「それでも!……。それでも私は岸田くんの事が好き」
彼は呆れたようにため息をついた。「吉川さんの知っている僕じゃないって言ったよね。それを知ってて、僕の何が好きなの? 顔かな?」自嘲と侮蔑の混ざった言葉を吐く。
結衣が傷付いた顔をする。
「見た目で選んで何が悪い」
俺の言葉に、二人は驚いたように俺を見る。
「付き合ってみればいいだろ。気に入らなかったら別れろ。簡単だろ」
二人とも驚きと呆れの表情。
「君は同年代の友達を作るべきだ」
結衣は困惑の表情で、岸田くんは諦めたような表情。
「吉川さん、使えるパソある?」
「あるけど?」
「よし、みんなでゲームしよ。オンラインでFPS」
「「はあ?」」二人とも意味がわからないと言う顔。
「試しに皆で遊んでみよう」
呆けていた岸田くんは自嘲気味に笑い、「FPSは遊びじゃないです」と言った。




