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岸田くんはイケメンである

 日が落ちた公園。


 街灯の薄明かりの中、岸田くんはベンチに座り、顔を両手で覆ってうつ向いている。

 俺は彼の隣に座っていた。


 岸田(ひろ)、彼はまだ中学2年生の男の子に過ぎない。


 公園の反対側、離れたベンチに吉川結衣が座っている。暗くて良く見えないが、心配そうに俺達を見ている。

 彼女には席を外してもらった。岸田くんのプライベートな問題だから。


「岸田くん。俺は高坂洋介。分かりやすく言うと、祓い屋とか拝み屋とか、まあ、そんな感じ」


 岸田くんは返事をしない。


「君の力になりたいと思っている。話をしてくれるかな? もちろん無理にとは言わない。話したくないことは話さなくていい。」


 彼は、顔を覆っていた両手を下ろした。


「あの女性(ひと)は?」


 あの女の悪霊のことだろうか?


「君についていた霊は払ったよ」悪霊と言う呼び方は避けた。


「成仏した。と言う意味ですか?」


 俺には、成仏という概念はない。でも彼にはその言葉がわかりやすいなら、成仏でいいだろう。

「浄化して悪いことをしないようにしてもらった。君の言う成仏で間違ってないと思う」


「よかった」彼は弱々しく表情を変え、俺を見た。どこか安心しているようだった。

「ありがとうございます」そう、はっきりと言った。


 彼は悪霊を払ってもらった事ではなく、悪霊が成仏できたことに、感謝していた。


 自分に取り付いていた悪霊の心配をするのか。

 彼は噂どおり、イケメンだった。


 実際には俺は岸田くんから話を聞くまでもなく、あの悪霊の正体を知っている。最初に悪霊をつかんだとき、悪霊の悪霊となった想いを受け取ったから。そういう能力。


 浄化するには、霊の持つ妄執を読み取らなければならない。その為に使った能力だが、なかなかツラい。狂気や執念が一気に頭の中に流れ込む。

 悪霊に成らざるを得なかった、哀しい想いも。


 あの悪霊が何故悪霊と化したか、何故岸田くんに執着したかも知っている。

 でも、岸田くんが、悪霊となった人物をどう思っているのかはわからなかった。


「あのひとを、救ってくれて、ありがとうございます」岸田くんは、何に対して感謝しているかをはっきりと伝え直した。


「どういたしまして。君が彼女を恨んでいないことがわかって嬉しいよ」俺は彼に微笑みかけた。


 彼も照れたように笑い返す。


「何かお礼をしないと」彼は思い付いたように言う。


「必要ない。俺は何も求めない。礼はいらない。ただ彼女の事を教えてくれないか?」

「?」彼は怪訝な顔をする。


「ちゃんとお祭りしたい。無くなった方の名前や、人物を知らないとやりにくいんだ」

 正しく精霊の類いに成ってもらうために。


 岸田くんは、彼と彼女に起きた物語を語り始めた。


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