嘘つき瑞希の決意
あの人は前世の記憶を失っていた。
「転生なんてオカルト、あるわけ無いだろ」あの人、高坂洋介はそう言った。
睦瑞希は叫びだしたくなった。
どうして私を助けてくれないの!
私はあと何度、こんな下らない世界で転生を繰り返さなければならないのか。
次の日、あの人の妹が教室に来た。何故か岸田くんを呼びだす。
あの人は私の話を信じてくれなかったのではないのか?
あの人の妹、高坂祐実を呼び止める。
「転生した。とか、幽霊が見えるだとか言っていれば、嘘つき呼ばわりされるのは当たり前だろ。バカかお前」
彼女は嘘つき呼ばわりされるのは当たり前とは言った。でも彼女自信は、私の事を嘘つきとは言わなかった。
あの人も私の事を嘘つきだとは言っていない。
あの人は転生なんてあるわけ無いと言った。
でも、幽霊なんているわけ無いとは言ってない。
そのあともあの人の妹に助けられた。
都合の良い勝手な解釈かもしれない。でも確かめたい。
その日、あの人の妹と岸田くんの話を盗み見することにした。
「いやー! 岸田くん!」
夕暮れ時の公園に結衣の悲鳴が響いた。
あの人の意識がそれ、悪霊が逃げ出す。
倒れた岸田くんと結衣を捨てて、あの人の後を追う。
すぐに見失ったが、禍々しい気が近くでする。
とある家の前で、あの人は女子高校生に馬乗りで首を絞められていた。
「ご主人様!」
怖い。恐怖で足が震える。でも、ここで逃げてはダメだ。また、過ちを繰り返すのか?
心が逃げることを拒否する。
でも、「また」とは何? 記憶が混乱する。
「ご主人様から離れてください!」私は叫んだ。
体が白銀に光る。そして、その光は右手に集約し始めた。
何これ?
自分に起きた異変に戸惑う。だが、これを知っている気がした。
「何だお前?」悪霊が訝しげに言った。
「離れてって、言ってんのー!」叫び、そして右手を悪霊に向かって突き出す。
光は強まり、一瞬で右手に集まる。そして槍のように伸びた。
光の槍は悪霊の体を撃ち抜いた。
私はこれを知っている。
思い出した。
あの時は間に合わなかった。
私の腕の中で息を引き取ろうとするあの人。あの時はただ泣き叫ぶしかできなかった。
あの男はあの人が助からないのを見て立ち去った。追いかけて、仇を打つか?
あの人の最期を見とるか?
あの人は人を殺せなかった。だからあの男を殺さず、殺されることを選んだ。
仇を打ったところで、あの人は喜ばない。
私はあの人の最期を見とることを選んだ。
もしも生まれ変わったら、今度こそ守り抜く。
「よかった。今度は守れた」これからもあの人を、高坂洋介を守り抜く。
「もう死なせない」




