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幼馴染みは腕の中に

「ご主人様!」


 叫び声が聞こえる。

 視界の端に、睦瑞希(むつ みずき)が映る。


 何で次から次へと人が集まってくるのか?


 というか、「ご主人様」と呼ぶのやめて。恥ずかしいから。


 瑞希は少しはなれたところで立ちすくんでいる。


 できたら助けてくれない?

 瑠璃を後から殴るとか、しがみつくとか。組んでいると、第三者からの攻撃に無防備だから。


 瑞希は動かない。この状況は中学2年生の女の子には、怖すぎる状況だろう。

 だが彼女は震える足を踏みしめて、顔を上げ続ける。

「ご主人様から離れてください!」彼女は叫んだ。


 夕暮れ時の茜色のなかで、瑞希の体が白銀に光る。その光は彼女の右手に集約し始めた。


「何だお前?」悪霊が訝しげに言った。少し恐れの色が混じる。

 悪霊の意識が逸れる。俺を締め付けていた手の力が弱まる。


 いけるか?

 俺は反撃に移ろうとした。


「離れてって、言ってんのー!」瑞希が叫ぶ。そして右手を瑠璃に向かって突き出す。

 彼女の体がさらに強く光る。光は一瞬で右手に集まり、槍のように伸びた。

 まるで光の槍を投擲するかのように。


 光の槍は瑠璃の体を撃ち抜いた。


 瑠璃がのけ反り、俺を締め付けていた手の力が弱まる。

 俺を抑えていた重心がずれたのを期に、俺は瑠璃を振り払って立ち上がる。振り返ると、瑠璃は後にのけ反っていた。悪霊は瑠璃の体からはみ出している。

 まるで二重にぶれた映像のように。


 俺はすかさず右手を伸ばし、瑠璃からズレた悪霊を掴む。


 今度はしくじらない。


 俺は空いている左手をカバンに入れた。短刀を抜き出す。

 鯉口を切ってあったので、鞘はカバンに残った。


 短刀で悪霊を切りつけ、打ち払う。


 悪霊は霧散した。


 俺の能力は、武器に霊力をのせて霊を浄化する。

 別に武器でなくても良いのだが、武器に霊力をのせるのが古くからの習わしだ。


「失う」と言ったが、悪霊は消滅させずに浄化した。霊魂の悪縁を切り、精霊のようなものに移行させた。いづれは他の精霊のようなものと合わさって混然となり、神のようなものになるだろう。


 俺は霊を消滅させたことはない。させる気もない。させることができるかどうかも、試す気すらない。


 霊が離れた瑠璃は、意識を失って倒れかける。

 俺は短刀を離し、倒れる瑠璃を抱き止めた。そしてその重さに耐えられず座り込む。

 意識を失った人間は重い。それに俺は、さっきまでの戦いで疲れ果てていた。


「ご主人様!」叫び声が聞こる。そして首筋に抱きつかれた。


 睦瑞希だった。


 だから「ご主人様」はやめろ。



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