拷問部屋でお茶会の女子三人
(生きてる……)
意識を取り戻すルルーチィ。だが、敵にソレを悟られないように気を失ったままのフリをしながら、現在の状況をできるだけ収集する。訓練された戦士がゆえの高度な技術、それをルルーチィは体得しているのだ。
(両手両足壁に固定、直立で拘束されている。湿度高し、地下牢と思われる。辺りに気配二つ。だが……)
もっと状況確認は必要だった。だが、ルルーチィは我慢の限界だった。
(目の前に立った気配の一つが私を……この屈辱!)
気を失っているのをいいことに、自分の尊厳を脅かす行為を行なう不貞のマフィア。
カクカクと揺すられている、それは許されることではない。冷静な戦士でいられるにも限度があった。
「貴様ーっ! よくもーっ! ナデナデすんなー!!!」堪らず絶叫。
「うおっ!?」と、相手は驚いた。
ネコ耳ルルーチィの頭をナデナデしていたのは『血染めの天秤』が首領アリスちゃんだった。
「人が気を失っているからと、いいようにーっ!」
「え? あ! いや、これはな?」
「だから、かってにナデナデしたら怒るって言ったでしょ?」
もう一人の気配、ローリィがアリスちゃんをたしなめた。
「いや、すまん。その――ソレを見ていたら、つい、な?」
「つい、でナデナデするな! 貴様ら人族の獣人族に対する差別『アニマル・ハラスメント』は筆舌に尽くしたがい」
「そう、ツンツンしないでくれ。悪気はなかったんだ」
「ふんっ、悪気なくても、嫌なことして、嫌って言われたら、やっちゃダメなんだから!」
「そうだな、すまなかった。許してくれないか?」
「はあぁ、まあ、初犯だし、今回は大目にみるけど?」
「ありがとう。じゃあ――これから、尋問を、始めてもいいよな?」
「あ……」
「場合によってはバッキバッキにいくから――ボッキボッキもあるかもね?」ニヤけるアリスちゃん。
「あぁ……」
「シッポある? 切っても生えてくるってホントお?」イジワルな顔のアリスちゃん。
「ない! 生えない! それ嘘だから!」
「えーっ? 信じられなーい。試しに先っちょ、少しちょん切ってもいいよね?」
ニッコリだけど邪悪な顔のアリスちゃん。
「ダメーッ!」
「ふーん? じゃ、全部、喋ろうね?」
もう完全にアリスちゃんのペース。
「だから、フュ、私は、フュェ、最初から、チィーちゃんに――フヒュ! ふぇーん・エ~ン……」
『アーン・あーん!』と泣きべそルルーチィ。
「あーあ、アリスちゃん、ひどいんだーぁ」とローリィ。
「なんだと? 私が悪いのか!?」憮然なアリスちゃん。
そして、しばらく――
『ヒック・ヒック』としゃくりあげながら、ローリィの差し出したお茶を飲むルルーチィ。
手枷足枷は外された。
三人、同じテーブルでお茶を啜る。
「落ち着いた?」と、ローリィがルルーチィに――
「……はい」とルルーチィ。
「どーせ、私が悪いんだから。いっつもコーだから!」とイジケてるアリスちゃん。
「あの、すみません。なんか……」
ルルーチィ、なんか座りが悪い。泣き出して開放されるとか失態だ。
しかも、敵の大将、そのせいでイジケてるし。
なんだか空気、最悪、どうすればいいかわからない、この状況。
「話してみない? なんだか行き違いがあるみたいだし」と、ローリィ。
「そ、それ! 私がずっと言おうとしてたのに――えーと、こちらで保護されている少女はさる貴族のご令嬢で……」
「オクエン国殿下だろ?」とアリスちゃん。
「な、なんでソレ……」
「それは暗殺者がな――」
「あ、ソレ……」と口を挿みかけてやめるローリィ。
「まずかったか?」
「いえ、どうせは伝わることでしょうし。でも、殿下のお口からのほうがよかったかもね」
「そうか、そうだな」
「あ、ああ、暗殺者って……姫は! チィーちゃんはどこ!?」
「大丈夫だ。暗殺者は撃退した。殿下は……」
「どこ? 会わせて!」
「その前にだ。殿下と貴様はどういう関係なのだ? それ次第な訳だが」
「私は姫の護衛役で、チィーちゃんとは友達」
「友達? お前がか? お前、オクエン国の貴族なのか?」
一国の姫と対等になれる立場の者などそうそうはいないはず。まして、ルルーチィは獣人の血を引いているのは明らかだ。下賤な立場として扱われるはずだ。獣人の能力をかわれ、護衛役になれたとしても友達だとは普通考えられない。そもそもまわりが許さないはず。
「貴族じゃないけど、チィーちゃんとは子供の頃からずっと仲良しだし」
「ますます意味が分からん。どうやって城に入ったのだ?」
「違う、いっつもチィーちゃんのほうからで、いつの間にかそこにいたし」
「なんだそれは」
「だから……」とチィルールとの出会いを話し始めるルルーチィ。
次回へ!
尻切れトンボって普通に空飛ぶ。平成生まれの子は知らないよね。
トンボ「尻なんて飾りですよ。偉い人には分んないです」




