警戒 パシュナ捕らわれる
ギイさんのお家を馬車の御者に尋ねたら、他のみんなを降ろしたあと追加料金で連れて行ってくれるとのこと。
そこそこの距離があったし、料金も適正だったのでそのままお願いした。
やがて馬車はギイさんの邸宅に到着。
パシュナさんだけがその場に降り立った。
用件当事者であるルルーチィは目的地手前で先に降りて、邸宅廻りに広がっている茂みの中に身を潜め、パシュナさんが門番とやり取りしている様子を伺っていた。
「ギイ様のお屋敷にナニ用か?」
「あの、私、ルルーチィ、とい――(う方の使者でぇ)」
「ぅなっ! ギイ様の恩人のか!?」
「ハヒっ?」
パシュナさんと門番のやり取り。
だがルルーチィにその声は届かなかった。
「あの私は――」
「おい、門を開けよ。それと奥様にご報告だ」
「あのお……」
「さあさ、どうぞ、コチラへ」
「はあ」
門番に促され、中へ入っていくパシュナさん。
「……」
それを離れた場所から見送るルルーチィ。
(なんだ? 連行されたのか? 私の居場所を吐かせるために拷問とかないよな)
でも一応用心して、パシュナさんとのおちあい場所から移動するのだった。
しかしである。
あれから数刻が過ぎ、日が落ち、夜がやってきても、なんの動きも見受けられなかった。
あげく、就業時間を終えた門番その他の警備員、従業員と思しき連中がぞろぞろと帰路についた風景を眺めていた。
(なんの緊張感もなかった。平穏な一日の終わり、その開放感に浮かれた感じだったな。酒呑みにいこー、みたいな)
ルルーチィの感想。
獣人族達の夜は早い。彼らの夜はオヤスミの時間。それは泥棒など悪人も例外ではなかった。だから夜間の警備など必要なかったのだ。
(忍び込めるチャンスではある。がしかし陽動の可能性もある)
さすがは特殊な訓練を受けたプロである。
館の明かりがすべて消える時間まで身を潜め続けた。
(さて、いくか)
月の光は明るかったが、はやい風に流される雲のおかげで闇も一定間隔できる絶好の潜入日和であった。
(こんなことになるなら、わざわざパシュナさん雇わなくてもよかったなぁ)
まあ今更である。
「ふぅっ、ックっ!」小さな声で気合注入。
戦闘モードの気合入れたルルーチィ、いざ出陣!




