メイド喫茶「臥薪嘗胆」2
メイド喫茶「臥薪嘗胆」の勤務が空けて、寮の自室に戻ったルルーチィ。
軽くシャワーを浴びた後、ベットに腰掛け髪をタオルで拭う。
そして考えるのは今後のこと。
(これ以上の駐留はマズイが。しかしマンエン国の軍隊がセンエン国近海にまで出張っているという。ならば、このセンエン国からオクエン国への帰路は限られてくる。とするとだ……)
国家間の戦時態勢染みた今のこの硬直した状況は、色々と際どい話になってくる。
まず、本来なら一番の使命であるチィルール姫の安全確保、その護衛任務は完全に失敗したといえる。敵側に姫殿下の居場所を先に知られてしまったのだから。
だが、敵勢力が帰路を塞いでくれたおかげで、離ればなれになったチィルールと合流できる可能性があがったのも事実だ。
(この街はセンエン国の北と南、そして東にある街を繋ぐ大都市でもある。そして南にいるはずのチィーちゃんはオクエンに向かう船に乗るため北上するはず。だとしたらこの街にやってくる可能性が高い)
それなりの計算もあってこの街に駐留しているのである。
平時なら南からでも月一くらいで出航される船でとっくにオクエンの城に戻れるはずだからだ。
(に、しては、だ?)
タオルを放り、クシで髪を掬うルルーチィ。
(動きがなさ過ぎる。街にはメイド喫茶で稼いだ金でやとった情報屋に、チィーちゃんらしき人物を見つけ次第報告するように網を張っているのだが?)
連絡は来る。だが情報はなかった。
(チィーちゃんはお姫様だけど完全に素人だ。情報屋の網をくぐり抜けれるとは思えない。だとしたら、私の知らない状況に――なにかが起こっているということか? でも世情を見る限りそんな気配もないんだが? これは素直に考えて上手い具合に逃走できているということなのか。いやしかし、でも)
クシの動きが止まる。
「くしゅ」とクシャミ。
慌ててクシを動かし始める。
(仲間が数人できたらしいけど、そいつらが、か? それならそれで安心とも言えるが? しかし! どこの馬の骨とも分からない奴らをチィーちゃんと? ありえない! 早急になんとかしないと!)
頭をフルフルして髪の水気を飛ばす。
そして新しい乾いたタオルで髪を覆った。
(でもなー。ココの人達のこともなー)
それなりに、この場所でしがらみが出来てしまっているルルーチィ。
(キューアさんはともかくとしてネーたんがなああ――)
キューアさんとはメイド喫茶「臥薪嘗胆」で働く元料理人だ。
実はルルーチィが掲げた「臥薪嘗胆売り上げ倍増計画」によって真っ先にリストラ対象になった可哀相なお姉さんであった。
本来ならルルーチィは後ろから刺されても不思議でない話ではあるけど、それはまた次回に……




