やすらぎと金きり声のはざ間で、おぉぅ
セイヤ一行が案内された大広間。
籐の家具が並ぶ南国風のたたずまい。
各々がそれぞれの場所で羽を伸ばす。
メイドさんに出されたお茶はすでになくなり、チィルールとリリィーンは敷居が一段高くなった場所に敷かれたラグマットの上に寝転びすやすやと寝息をたてている。
(さっきも昼寝してたのによく寝れるもんだ。寝る子は育つっていうけど嘘だなありゃ)
セイヤはテラスの椅子にもたれ込み、ちんちくりんな体形をした少女二人を眺めながら思った。
テラスからの大きな開口部にはスダレがかけられており、夕暮れどきとはいえ強烈な日差しを遮りつつ涼やかな風を通してくれる。
(静かだ――気持ちがいい)
そんな思いのまま知らずしらずにウトウトとする。
目の前、向かいの椅子にはトロイが物静かに腰掛けている。その、みんなを見守っているかのような優しい目線にセイヤも安らぎを感じながら眠りに落ちていく。
やがて日が暮れ、辺りは赤紫色した夕闇気配。
急に気温が下がってくるのだが、今度は大地の熱をまとった風がやさしく身体を温めてくれる。
そんなやさしげな風に乗って遠くから小さく聞こえてくるギグくんの叱る感じの金切り声とギコくんの「あーん、あーん」と泣きわめく悲痛な声。
男性の大人の声も混じっているので心配はなさそうだが。
(あー。ギイさんが取り繕うとしてるな。でも大変だろうなぁ)
思春期のエロバレなんて自殺レベルだろう。ギグくんには同情の念を禁じえない。
(あれ! 寝てた?)
夢心地の半覚醒からセイヤは目を覚まして自分自身が寝っていたことに驚く。
「あ? 今、どれくらい」
「一時間もたってはいないよ。それよりも君はもう少し――いや、なんでもない」
慌てる様子のセイヤに向かってトロイが冷静に同情するかのように答えた。
辺りはもう暗くなっており、見回すサバンナの向こうに広がる空の果てが少し赤いスジを残しているだけであった。
「へんな時間に寝ちまった。アイツらもそろそろ起こさないと夜に騒がしいことになるぞ」
「ホラ足元、気を付けなよ」
「うわ。明かりほしいな」
月の明かりが頼りになるほどには、闇はまだ深まっていない時間。それはすべての風景を黒いトーンにしてしまう。影と影が重なると遠近感はまったくなくなってしまった。
「失礼します。灯りをお持ちしました。遅くなって申し訳ありません」
ランプを手にしたメイドさんが部屋に入ってきた。
元々この建物には扉というものがないので出入りは自由だった。おそらく気温の高いこの一帯特有の風通しを考慮された設計の建築なのであろう。それゆえギグくんの秘密がギコくんに露呈したのも仕方のないところか……
「少々、お待ちください」
メイドさんは部屋の各部に設置されたガス灯(?)にランプの炎を種火に使って明かりを灯していく。その明かりは蛍光灯のような白い輝きを放つ炎であった。
「夕食の準備は整っております。只、旦那様が多忙のご様子なので、今しばらくお待ちいただければと」
「……はい」
灯りを点け終わって、改めてかしこまるメイドさんの言葉。
今、お父さんのギイさんが息子兄弟であるギグくんとギコくんの間で大変な状況。
それはセイヤ達にもよく分かっていることだった。
(でも、ちょっとお腹へってきた。ギグくん、なんとか収まってくれないかなあ。でないとコイツら――)
もそもそと起きだしたチィルールとリリィーンを目にしながらセイヤは思ったのだった。




