第98話 汚物掃除
誰も彼もが『黒葉宮』に注意と関心を集めていて背後にいるオレ達には目もくれない。
だから、オレ達は黄昏の空に向かって一発の魔弾を放った。
「「!?」」
銃声に誰もがこちらを振り返り、驚きに目を見張る。
「何者……いや、まさか!?」
誰かが口にしたその言葉に、応えるためにオレ達は言う。
「誰と聞かれたら応えてやろう」
「ガン=カタを愛する者として!」
自然と真っ二つに人波が割れてオレ達を通す。
開けられた『黒葉宮』の玄関の真正面には、暴れるユルルアちゃんにのしかかるアルドリックがいて、オレ達を驚愕と恐怖の目で見つめていた。
「な、何だ!?誰だ!……まさか……そんな……本物なのか……」
しばらくアルドリックはワナワナと震えていたが、釘を握ってオレ達目がけて突進してきた。
「――うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
その突進をふわりと回避しながら、オレ達がその両肩と両足に魔弾をたたき込むと、アルドリックは突進した勢いのまま地べたに転がり凄まじい絶叫をあげた。
「ぎゃあああああ、痛い、痛いいいいいっ!!!」
「今だ、押さえろ!」
兵士達がアルドリックを拘束したのを確認して、オレ達は黄昏に溶けるようにしてその場を去ったのだった。
女兵士がユルルアちゃんの無事を確認している間に、他の兵士達がオレ達が転がっているはずの部屋に駆け込んでくる。
その時には、オレ達は車椅子にどうにか座ろうと床を這いずっている所だった。
アーリヤカとアルドリックが処刑された頃には、アルドリックの脱獄を謀った罪でアーリヤカの実家であるニテロド一族全員も捕縛され、賄賂を受け取った罪で牢番の数名も投獄された。そのおのおのに対して捜査が完了し適切な処罰が下されるのはこれからとなるが――。
――ひとまず、これで偽シャドウの事件は幕を閉じたのだった。




