第84話 Q:執着溺愛系鬼畜男子×依存系闇ンデレ美少女の解を求めよ
「御無礼を承知で申し上げます、お恥ずかしながら我が妹はもはや何人にも嫁げる有様ではございませぬ」
ユルルアちゃんの長兄、カドフォ家の嫡男でもあるヌスコが平身低頭で断りに来た。
「僕には彼女が必要なのだ」
「身内の恥を晒しますが、我が妹は先日、第二の母同然に慕っていた乳母にさえ手を上げたそうで……」
「それも聞いた」
「万が一にも殿下に手を上げたならば……!」
「それでも必要なのだ」
「ですが」
「どうしてもだ」
オレ達がここまで強引だとは思わなかったらしい。ヌスコはとうとう折れてくれた。折れるまでオレ達が押すとは思わなかったのだろう。
「……では、誓約書を書いては頂けませぬか。妹が殿下に手を上げた場合にも、どうか我が一族に累の及ばぬ様に……」
「無論だ」
――それから何やかんやあったが、どうにかユルルアちゃんはオレ達の正式な婚約者となったのだった。
「……っ!?」
待て、待て。由緒正しい大貴族の姫をどうして猿ぐつわをした上に縄で縛って抱えてくるんだ。顔は包帯で巻かれていたが少し解けかかっていて、血走った目が合間からオレ達を睨んでいる。
「こうでもせぬと暴れられて噛みつかれます故……」
疲れた顔の宦官がその事情を説明してくれた。
「分かった、全て外して帰ってくれて構わない」
「殿下の御身が危険でございます!」
「構わない。何があろうと責任を問いはしないから」
宦官は渋々、ユルルアちゃんの束縛を解いて、部屋を出て行った。
「……」
ユルルアちゃんはギョロリとした目でオレ達を睨んだまま動かない。
「こうやって会うのは初めてになる。僕がテオドリックだ」
「……知っています。どうして私を?」
「ずっと欲しかったからだ」
キャハハハハハ!と彼女は甲高くけたたましい笑い声を上げた。そして顔を掻きむしるようにして包帯を取った。
「この面を見てもまだ欲しいと?清らかでも無い醜女を?鞭打たれた時に気が狂われたか!」
「黙れ、」
「いいえ二度と黙りませぬ!もう男共の言いなりになぞなるものか!」
そう言うなり彼女はオレ達に飛びかかってきた。




