第83話 復活、始動
処刑人達が疲れ果てながらも、皇子テオドリックの死体をせめて葬ってやり、魂を弔うために運ぼうとした時だった。
「よ、蘇った!?」
「馬鹿な!確かに心臓が止まったんだぞ!!!?」
その声に真っ先に反応したのは、処刑場の貴賓席に最後まで残っていた皇子ヴァンドリックだった。
皇帝以下の他の皇族や貴族は既に引き払っており、民衆さえも帰路についていて、唯一……力なく項垂れている彼と彼を支えるミマナ姫だけが残っていた。
「テオ、テオ!」
反射的にテオドリックへ駆け寄ろうとするヴァンドリックを制して、素早くミマナ姫は袖から金貨をありったけ取り出すと処刑人達へとばらまいた。
「皇子テオドリックの『亡骸』を渡すならば、後でこの倍の金貨をやりましょう」
どうしたものかと処刑人達は――お互いに顔を見合わせた。
だが、どちらからともなくポツリと呟いた。
「なあ……おまえ、この仕事がいつまでも続くと思うか?」
「このままじゃ、最後に鞭で打たれるのはオレたちだよな……」
彼らは何度か頷きあった。
「『渡した後で蘇生した』ならオレたちのせいじゃない」
「ああ、そうしよう」
……半年は動けない程の重傷で、仮に治ったとしても背骨と神経をやられて歩行機能、生殖機能も壊滅した、いわゆる下半身不随は確定。鞭打たれ全身に残った傷跡も一生消えない。年がら年中傷跡が痛い上、冬は寒さで痛みが酷くなる。車椅子は必需品になって、階段の上り下りも一人じゃ出来ない。
その代わりに、オレ達は無二の相棒を手に入れた。
「トオル、この漫画と言うのは面白いな!アニメと言うのも非常に斬新だ!ゲームも実に素晴らしい!食事も美味い!ふむ、文化もそれなりに興味深いではないか!
精霊獣はこの世ならざる神々の世界から招かれると聞いていたが、神々の世界にこれ程に愉快な娯楽や文化があったとは!」
お互いの知識や考えている事、記憶までも共有できると知って、オレは真っ先にテオにこれを見せた。
「神々の世界じゃないけど、オレのいた世界の娯楽にはこんなのもあるんだぜ」
「映画……とな?ふむ、物話を作りそれに沿って役者が演じる場面を記録して繋げたものか。アニメと似ているな」
「そうそう、大体それで合っている。
最初にコレを見ようぜ、『Equilibrium』……邦題『リベリオン』。
オレの大好きな映画なんだ」




