表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】ガン=カタ皇子、夜に踊る  作者: 2626
First Chapter

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

80/297

第79話 誰よりも父に似た息子

 オレ達が皇族一『不出来』なのだとしたら皇族一『問題アリ』なのがアルドリックである。

誰よりも性格が『赤斧帝』に似ているのだ。

欲しいと思ったものを力ずくで手に入れようとするのはアルドリックの悪行の中ではマシな方、気に入らない宦官や女官に暴力を振るうのはよくある事。己より弱い者を虐めるのが趣味。何だっていつだって己が一番で無ければ気が済まない。

ならばそれなりの努力を重ねて実力を磨いているのかと言えばその真逆。威張る事しかしておらず、実際に己の高貴な血筋だけしか誇れる所が無い。

事あるごとに『俺様は本当ならば皇太子になるはずだった男だ』と言う。

その実、荒れる世を憂いた異母兄の皇太子ヴァンドリックのように『赤斧帝』に覚悟を以て立ち向かったのではなく、ただただ『赤斧帝』に媚びへつらってその寵愛だけを頼りに生き延びたのに。

頭も悪ければ態度も悪い――何より性格が悪すぎる。

それが第二皇子アルドリックである。



 ある日アルドリックは、テオドリックとユルルア姫の見合いが進められていると言う話を聞いて帝国城を抜け出した。カドフォ家に忍び込んで噂のユルルア姫を一目見てやろうと思ったのだろう。そして実際に目にしたユルルア姫は、可憐で華奢で美しい桜の女神のような乙女だった。



 ……この先に起きた事件をオレ達は語りたくない。唯一語れる事はユルルアちゃんの妹同然だった召使いの少女ハビがユルルアちゃんを庇った所為でアルドリックによって殺された事だけ。

この事件の直後にテオとユルルアちゃんの縁談は流れ、代わりにアルドリックとユルルアちゃんが許嫁になった。


 ――もしもこの事件が起きた時に、皇太子ヴァンドリックが全権を握っていれば話は違ったかも知れない。

だが時の帝は暴君『赤斧帝』で、『赤斧帝』は己に似ている第二皇子のアルドリックとその母であるアーリヤカ皇后を殊更の贔屓にしていた。


 ユルルアちゃんはそれでも懸命にアルドリックに尽くした。貴族の姫君としての生き方しか彼女は知らなかった。優しすぎて己を犠牲にするやり方しか出来なかった。アルドリックが数え切れない程の相手と浮気しようと、あまつさえ己に暴力を振るい暴言を吐こうとも己を殺して尽くしていた。


 ――しかし、ある日とうとうアルドリックは『呪詛』された。



 『乱詛帝』が残した呪いの力を宿す品々は、密かに闇のルートで僅かな数が流通していた。己の命を犠牲にして発動し、相手を散々に苦しめてから呪い殺すと言う代物だ。

帝国浄化局が見つけ次第、封印したり破棄したりして数を減らしていたものの、逆に希少価値を持って――未だに残存していたのだ。


 アルドリックに殺された――ユルルアちゃんに仕えて妹同然に可愛がられていた召使いの少女ハビの両親がそれを手に入れた。

彼らにはハビしか子がいなかった。だから躊躇無く家を売り、家財を売り、先祖伝来の土地を全て売って、手に入れた。

遺書に血で恨みを書き連ねて、両親自らが犠牲になり……その呪いをアルドリック相手に発動させたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ