第77話 目立つ事
「だ、大丈夫ですか!?」
物陰に隠れていて貰ったユルルアちゃんと、この事態を知ってオレ達に土下座で助けを求めてきた特待生の友人が駆け寄ってくる。暴行されていた特待生もすぐに起き上がって、オレ達が車椅子に腰掛けるのを手伝ってくれた。見た目は酷いが重傷では無さそうだ。
「あ、ありがとうございます……!」
「異母兄が、済まない」
オレ達はただ謝るしか出来ない。何だあの頭の悪い、汚いだけのジャイアンは。しかも成長するにつれて加速度的に悪化している。
「い、いえ……目立つ事をしてしまった僕も悪かったんです」
わっと友人の方が泣き出した。
「でも中間試験で一位を取っただけじゃ無いか!君が誰よりも勉学に励んでいた事は僕達が知っている!」
「落ち着いてくれ、相手は皇族の、しかも第二皇子殿下なんだ。もっと僕は賢く立ち回らなきゃいけなかった……」
「……」
ユルルアちゃんが黙って唇を噛みしめているのが分かる。
オレ達は一番効果的な対処法を考えた。
「君達の後見人に申し立てれば、多少は事態が改善するかも知れない。後見人の名は?」
「あ、そうか!僕達は二人とも『賢梟』閣下です」
帝国十三神将の一人『賢梟のフォートン』か。それなら安心だし、話も早い。
「事情を説明すれば何らかの便宜を図ってくれるだろう。もしかすれば皇太子殿下のお耳に入れて下さるかも知れない。そうすれば君達は安全だ」
「ですが、その、ただ……」
特待生達が泣きそうな顔をした。
「僕達の代わりに……」
「ああ、うん……。他の特待生があんな目に遭わされそうで……」
そうか、アルドリックなら間違いなく遭わせる!
あの汚物ジャイアンの素行と来たら酷いもので――普通の生徒ならとうの昔に停学退学に出来るものを、運悪く第二皇子に生まれた所為で、卒業して出て行くのを待つしか無いのだ。
「だったら、他の特待生にも知らせてくれ。何かあったらすぐに僕を呼ぶようにと」
「ですが!」
「命令だ」
はい、と二人とも泣きそうな顔をして頷いてくれた。ユルルアちゃんは俯いたまま震えていた。




