第70話 紛れもなく家族だった
「これを見なさい……あの子はやはりドワーフと、私の兄の血を引いている。しかしこの子に本来の出生を知らせたとしても、何も得策では無いだろう。事実、兄は……先の帝に逆らってしまったドワーフの血を引くこの子を守るためだろう、遺書も残さずに自害したのだから。ああ、間違い無い!間違いようが無い……幼い頃の兄の面影が……」
「でしたら旦那様……いえ、これ以上はおっしゃらなくて構いません。私には腹を痛めて産んだ子こそおりません、でも、どうか穏やかに健やかにこの子を育てたい。このまま私達はただの義理の養親でいましょう、それこそがこの子のためですわ」
――どうして今まで忘れていたのか。違う、思い出す程の興味が無かったからだ。
でも俺は疑いようが無く、義理だろうが何だろうが、両親に紛れもなく愛されて守られていた。
「娼婦で試した。人体に『分解』を使うとどうなるか……。伯父上達にも、毒を盛るよりこれを使えば楽だったのだ。あの時の私は浅はかだったよ」
徐に立ち上がると、棒を捨ててソーレはオユアーヴに歩み寄ってきた。
「最初に喉だ、声を出せないように。次は手足だ、暴れられないように。それから内臓を一つずつ……心臓と頭だけは最後まで残してやる」
死にたくない!散々に痛めつけられた体を無理矢理に動かしてオユアーヴは抵抗した。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない!死ぬのは嫌だ!
正真正銘に俺を愛おしんでくれた両親のために今ここで死にたくない!
「何もかも!私の人生は!貴様がいた所為で滅茶苦茶になったんだ!」
ジタバタと暴れるオユアーヴに馬乗りになって、ソーレはついにその喉笛に手をかけた。
――扉の蝶番と閂を撃ち抜いて、オレ達はその現場に駆け込んだのだった。
「だ、誰だ!?」
驚愕するソーレにオレ達は言い放つ。
「誰と聞かれたら応えてやろう」
「ガン=カタを愛する者として!」




