第49話 最強の零距離近接お祓い術「ガン=カタ」
「ガン=カタForm.12『ハングドマン』!」
『シャドウ』は一瞬で間合いを詰めて、肉弾戦でギルガンドの体を操る残呪に挑みかかった。
繰り出される軍刀の一撃を不思議な武器で受け止め、あるいは、水面の影を踏みつけてもその実体は何も変わらないがごとく、一切の攻撃を華麗に躱し、ギルガンドの体に根を張った残呪を武器から放たれた礫で完璧に粉々に打ち砕く。
何と、とギルガンドは驚いた。話通りだ。本当に真夜中の舞台で踊っているようだ。
『何故だ!』
焦った様子の残呪の叫びに答えたのは、礫が不思議な武器から放たれた際の雷鳴のごとき咆吼だった。
『何故当たらない?!この体は「閃翔」の体ぞ――!』
『クソ野郎のクズの卑怯者の人でなしの!』
『貴様が操っているからに決まっている!』
それに、と追撃は続いた。
『お前みたいな鬼畜を放任するほど!』
『僕達は弱くも腐りきってもいない!』
――ギルガンドの心臓にその礫は命中して、確かに一度は心臓が止まったのを彼は自覚した。
それなのに、何故か見えていた。聞こえていた。感覚として知覚していた。
心臓を撃たれてギルガンドの体を蝕んでいた残呪の力が弱まった瞬間に、シャドウの背中から3本目と4本目の手が伸びて、残呪の具現化した黒い植物をぐいとばかりに根こそぎ引っこ抜き、すぐさま靴底で踏みにじって潰したのを――そして手当てをしようとして、横倒しになった彼の側で跪くのも。
『やば、心臓が止まっている!』
『オート……なんとかだ!やるぞ!』
『オートメイティッドエクスターナルデフィブリレイター、略してAEDだ!』
『正式名称は後にしろ!』
『まずは脱がさないと』
『っ、酷い怪我だな……』
軍刀で服を切り裂かれたと思ったら、全身に、文字通り感電したような酷い衝撃が走って――ギルガンドは意識と呼吸と痛覚と体の自由を同時に取り戻していた。
「げぼっ!がはっ、がっ、ぐっ――!」
あの凄まじい衝撃のためか全く体を動かせない、それでも視線だけを動かして暗闇の中へ消えていくシャドウの後ろ姿を睨んで――。




