第29話 芸術作品なので
「出来たぞ」
2丁拳銃『シルバー』&『ゴースト』の手入れと改造をしていたオユアーヴが、終わったと言って1丁ずつ抱えてオレ達に渡してくれた。
「いつも思うが……こんな重たいモノをよく片手で操れるな」
巨大な2丁拳銃は、オユアーヴの言うようにオレ達にしか扱えない。
「ガン=カタを極めるには、何より火力が大事だからね」
「……魔力を換えた『魔弾』を無制限に打ち出す性能と引き換えに、常人では制御も携行も不能な代物になっているんだぞ。力自慢の武官が儀礼の時に掲げる典礼用の武器だってここまでじゃない」
「そう言う採算度外視で浪漫を追求する『武器』を生み出すのは、オユアーヴは大好きだろう?」
「俺にとっては『芸術作品』だ!」
一気に機嫌を悪くしてオユアーヴは唸った。
おっと。これはオレ達の失言である。
「悪かった。芸術作品だからこそオユアーヴだって極めたいんじゃないか」
「そうだ!それ以外に理由は要らない!」
「ガン=カタは僕にとって人生を捧げるに値する芸術作品だ」
「……納得は、出来る……」
オユアーヴの殺気が収まって、うんうんと合点がいった顔をしていたら、クノハルが青い顔をして小走りに来た。
どうしたんだ、こんな夜明け前に?
ユルルアちゃんだってまだ眠っているんだぞ。
「現在、ヴォイドが兄の所にいます」
「ロウの所に!?」
「『いる』?『捕らえている』ではないのか!?どう言う意味だ!?」
想定外の事態に、オレ達もオユアーヴも顔を険しくした。
「『フェイタル・キッス』の高級娼婦の一人にフェーアと言う者がいたのですが……」
「!?」
「彼女がヴォイドになりました」
途轍もなく嫌な予感がした。
「フェーアは今……『人の心が残っている内に、殺して欲しい』と、よろず屋の『地下室』で泣いているそうです」




