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【完結】ガン=カタ皇子、夜に踊る  作者: 2626
First Chapter

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第23話 無垢なだけの恋①

 「……ガキを雇ってくれだって?」

『フェイタル・キッス』の楼主、マダム・カルカは声を荒げた。

「いくら常連のアンタの頼みだろうとそれはお断りさね。遊郭の不文律をアンタが知らないとは言わせないよ。しかも男だって?ここにゃ娼婦しか置かないとアタシが決めているんだ」

ロウは拝み倒すようにして頼む。

「あの馬鹿小僧にとにかく辛い仕事をやらせてくれ、遊郭の現実を見せてやって欲しいんだ」

「はあ?」

実は、とロウが説明するとマダム・カルカは鼻先で一笑した。

「要は、恋に恋した頭の悪いガキに冷や水をぶっかけてやれって頼みかい。精々こき使ってやるよ」



 まるで人なつっこい犬みたい、と言うのが最近の『フェイタル・キッス』の娼婦達のもっぱらの話題である。

彼女たちは今、『控え室』で化粧を直したり、お菓子をつまんだりしながら、客がまだ来る前のわずかな休憩時間を過ごしている。

「尻尾があったら振り千切れているんじゃないかしら」

「ふふふ。あれが本当に犬だったら番犬としてウチで飼えないか、マダムに掛け合っていたわよね」

「でもあんなに人なつっこいのじゃあ、番犬にならないでしょ」

「犬だったらペットとして飼えるわよ?可愛いだけで死ぬまで養ってやれるわ」

「絶対に裏切らないものねえ」

「そうそう。ずっと好きでいてくれるわ!」

ずっと好きでいてくれる、か。フェーアは内心で呟いた。

そうね、人間は娼婦の事をずっと好きでなんていてくれないわ。

「すいやせーん!入っていいですかい?」

その時、話題の犬の声がして、フェーアも反射的に裏口側のドアの方を見つめていた。

「どうしたの?」

年長の娼婦が不審そうに声を出すと、

「ロウさんがおいらが世話になるからって、あの、お菓子をですね、マダムに持ってきました!それでマダムにお渡ししたら、食べきれないから皆様に配るようにって言われまして!」

「じゃあ扉を開けるから、卓の上に置いてさっさと出て行って」

「勿論ですぜ!」

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