第155話 影はいつだって
「修理が終わった」
オユアーヴがそう言って先ほど密かに渡してくれた『シルバー』&『ゴースト』の調子を確かめていると、オレ達を背中に負ぶって寮の部屋まで階段を上ってくれたゲイブンが羨ましそうに言った。
「良いなあ。ちょっとだけ、おいらも格好いい武器が欲しいですぜ……」
「ゲイブンの武器は素直で優しい所だ。ただ優しいだけじゃなくて、行動と責任を伴う優しさを持っている者はごく僅かしかいない」
「えっ!?おいらもしかしてテオの兄貴に褒められているんですか!?」
「そうよ、テオ様が褒めているの」ユルルアちゃんが笑った。「だから自慢して良いのよ、ゲイブン」
「えっへん!ですぜ!」
胸を張るゲイブンに、オレ達は訊ねる。
「それで、勉強の方はどうなんだ?」
途端にゲイブンの風船から空気が抜ける。
「……またクノハルの姐さんから宿題を……たっぷり……ですぜ」
「いくら文句を言っても、きちんとゲイブンは宿題をこなしているだろう?医者になりたければ、知識は不可欠だ」
「へい…………」とゲイブンは殊勝な顔をして頷いた。
――さあ、オレ達の時間が来た。
「テオ様。ご武運を」
「ああ、行ってくる」
夜な夜な、オレ達は道化師の仮面を着けて、月が輝く夜の世界に飛び出す――。
「それにしてもまた痛かったな……応急措置だったけど一瞬だけベリサとオレの魂を繋げたからな……。モロに首を切られた痛みを堪能しちまったぜ」
「もう、ベリサとは繋がっていないのだろう?」
「ああ。今頃何しているんだろうな……」
「さあ、な。涙を流していない事を祈ろう」
「おう。……よし、じゃあ今夜もやるか!」
「『ガン=カタ』の極致を目指すぞ」
オレ達は真夜中の舞台で踊るように戦う。
いつだってこの決め台詞を掲げ、2丁拳銃を構えて。
「誰と聞かれたら応えてやろう」
「ガン=カタを愛する者として!」
First Chapter END




