第144話 オレ達の時間だ
「ガン=カタForm.16『タワー』!」
『ころす!』
その仮面の戦士は真っ向から『タイラント』と殴り合った。一撃でも当たれば即死する攻撃を踊るように交わして、零距離で魔弾を叩き込む。続けざまに閃光と雷鳴が放たれ、魔弾が圧縮されて放たれる際に銃口を焼く。
『シルバー』&『ゴースト』が熱を帯び、その銃身が静かな雨に打たれて蒸気をあげる。
「クリティカル、だと!?」
驚愕する『赤斧帝』が額に脂汗をにじませる。『タイラント』はまだ耐えているが、仮面の戦士からのクリティカルの攻撃をことごとく被弾していた。まだ体力や再生能力の方が上回っているが――このままでは聖奉十三神殿からの増援が間に合ってしまう!
戦争において時間の浪費は挽回不可能なまでに致命的だと、かつて戦場を駆けた彼は知っていた。
「『タイラント』、先にヴァンを殺せ!」
『わかった!』
雨の中、すぐさま『タイラント』が皇太子の方へ跳躍するが――。
「鈍い!――ガン=カタForm.7『チャリオット』!」
移動できない空中で追いついた無数の魔弾によって叩き落とされ、衝撃と共に雨に濡れてぬかるみ始めた地べたを這った。
『ぎい、ぎいいいい!!!』
もがいた『タイラント』の上に、すうっと影が差して、この血に飢えた精霊獣が思わず顔を上げると――。
ミサイルが無数の流れ星のように降ってきて天空を埋め尽くしたあの夜のように――残酷なまでに美しい月を背負って、その黒装束の男は2丁拳銃を構えていた。
道化師のような笑顔を模した仮面なのに、雨が伝っている所為で、まるで泣いているように見えた。
「終わりだ!」
ああ……。
そうだ。
そうだった。
あのよるも……とってもつきがきれいだとおもったんだ……。
ドォン、と『タイラント』の体が地響きを立てて倒れた。




