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【完結】ガン=カタ皇子、夜に踊る  作者: 2626
First Chapter

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第143話 月の影

 「どうした?逃げないのか」一歩一歩と距離を詰めながら、『赤斧帝』と『タイラント』は皇太子とロードに迫っていく。「逃げればお前の命だけは助かるやも知れんぞ?」

「その代わりにこの帝都の民を一人残さず手にかけるつもりだろう」

「流石にお前は分かっているか。昔からお利口だったからな。そう言えば……もう一人、お前の下にいたはずだったが……」

思わずヴァンドリックは大喝していた。

「貴様が殺したのだ!私を庇ったテオを!あんなにも惨いやり方で!」

「殺める事は呼吸と変わらぬ、私にとって。死ねば皆同じ、ならば手段など何でも良いだろう」


 それを実証するかのように『タイラント』の豪腕が振り下ろされた――。


 ――オレ達が走りながら放った魔弾が命中して、振り下ろされた『タイラント』の腕の軌道を僅かに変えた。同時に『ロード』がヴァンドリックを抱えて後ろに飛び、地面に大穴が空いたものの辛うじて回避させる事に成功する。


 「誰だ!?」

 『ころす、じゃま!じゃま、ころす!ころすころすころす!』



 「誰と聞かれたら応えてやろう」

 「ガン=カタを愛する者として!」



 その者は、雨夜に浮かぶ月を背景にして――太極殿の廃墟の上に、まるで影のように立っていた。


 「そんな……まさか――!?」

手を伸ばそうとしてヴァンドリックは力なく地面に倒れる。しかし『ロード』にももう彼を助け起こす力も無く、傍らでうずくまるきりだ。

二人が顔を上げて揃って無言で見つめる中、オラクルが叫んだ。

『ああ!ああ!――私の脳裏を焼くほどに眩しかったあの光は、闇夜を照らす月の光だったのだわ!』

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