第139話 無音通信
――帝都の家々の屋根の上を帝国城目がけて一目散に駆けながら、オレ達は『シルバー』&『ゴースト』を手にして、いつでも魔弾を放てるように魔力を装填した。
『――た、たた、たたたたった、ああああ、うひゃっ!?』
その時、ゲイブンから無音通信が来たので、オレ達は異変に気付いた。
よろず屋からはいつだってロウが無音通信をしてきていたのに、何があったんだ?
『どうしたんだ、ゲイブン?』
ゲイブンは尻に火が付いたような混乱っぷりだった。
『ロウさんがいきなり出て行っちゃって!そうしたら女の子が出てきて!女の子が助けてって言って!黒い植物の中に閉じ込められて!で、女の子がロウさんが呪われたって!』
『深呼吸できるか?スー、ハー、スー、ハー……真似してくれ』
『スー、ハー、スー、ハー……ふ、ふうっ!「シャドウ」さん、あ、あのですぜ!』
ゲイブンはつっかえながら話してくれた。ロウが先ほどいきなり出かけてしまった事。
そうしたらパーシーバーと名乗る女の子が出てきたのだが、黒い植物に閉じ込められて動けなくなり、ロウが『乱詛帝』による呪いを受けていた事をオレ達に伝えて欲しいと懇願した事。
『ロウが何処に出かけたか分かるか?』
『そ、それが――あっ……』
ゲイブンが少しだけ沈黙した。
『ロウさん、杖を置いていっていますぜ!?じゃあどうやって歩いているんですぜ!?……え?あ、分かりました、交代しやす!』
続いて聞こえたのはパーシーバーの苦しそうな声だった。
『「シャドウ」、大変よ……ロウも「乱詛帝」の呪いを受け継いでいたみたい……もう意識は残っていないわ……どうにか魂だけは守れたけれど、体を……奪われちゃった……』
『どうしてロウが呪われたんだ!?』
『血よ……血……。ロウの血縁上の父は……「乱詛帝」だったんだわ……。
あの人でなしは……己の血にも呪いをかけていたのよ……己がもしも……殺されても……精霊獣を従える……血を引き継いだ者の体を奪って……復活できるように……まるで病が潜伏する時のように……静かに……時が来るまで……!』
『「赤斧帝」に「乱詛帝」が揃っているとはこれまたご大層な歓迎だ』
『ごめん……ロウを……助けて……、わたしの、大事な……大事な……』
『「シャドウ」に任せろ』
『…………』




