第133話 君主VS暴君
まるで地獄の魔王のように恐怖と絶望と暴力の化身を従えて、『赤斧帝』ケンドリック・ダルダイルス・ガルヴァリーノスは人気のまるでない帝国城を進み、とうとう政務と権力の中枢部である大朝堂までたどり着いたのだった。
その数歩後ろには『V』ことベリサがスキップするように歩調を弾ませながら付いていく。
「お父さん、わたし上手にやったよ!ねえ『スレイブ』もそう思うでしょう?」
『…………』
『……「V」。本当にこれで良いのか?』
どこか疲弊して病がちな印象を受ける――精霊獣『スレイブ』は苦しそうに訊ねた。
『本当にこれで……「V」は幸せなのか?』
「幸せに決まっているじゃない、だってずっと会いたかったお父さんに会えて、こんなにも褒めて貰えるんだから!」
『「V」……でも、あんなに大勢の人を苦しめて傷つけて殺した上におまえの幸せがあったとしても、その足下はとても脆くて……』
ベリサは振り返って精霊獣を一喝する。
「それよりヴァンドリックをやっつけなきゃ!ヴァンドリック本人は大した力を持っていないけれど、生かしておけば必ず力を取り戻してお父さんの邪魔をしにくるから!わたし達でできる限りお父さん達を助けるのよ!」
『……分かった……「V」』
大朝堂の扉を蹴り砕いて『赤斧帝』が、皇帝のまします太極殿を真正面に見据えた時、そこには皇太子ヴァンドリックが『善良帝』の代わりに腰掛け、隣にはミマナ姫が控えていて、冷徹な眼差しで彼らを見下ろしていた。
「来てやったぞ、ヴァン!私が再び『赤斧帝』となるために!」
「この高みは貴様ごときの座して良い処では無いのだ、下がれ」




