第125話 念には念を
「……と言う事情でして、皇族の方々には安全が確認できるまで帝国第一高等学院への通学を控えて頂きたいのです」
帝国治安局の職員がやって来て、オレ達に局長の署名が記された正式な書類を渡してくれた。
「分かった。伝えてくれて感謝する。また学院の安全が確認できたら知らせて欲しい」
「承知仕りました」
と職員は一礼して去って行く。
――オレ達はユルルアちゃんやクノハル、オユアーヴも一緒に、作戦会議を始めた。
「トロレト村が解放された事で生産拠点は潰えた。流通と販売を担っていた組織の親玉は殺された。ブラデガルディース家が押さえられた事で保管庫も消えた。となると……後は散らばった『神々の血雫』の持ち主を各個撃破するしか無いと言う訳か」
「まだあります」とクノハルが言った。「最初に『神々の血雫』の製法を生み出し、かつ改悪した者を突き止める必要があります」
「敵は、創造主か職人なのか」オユアーヴが嫌そうに言う。「どんな精神をしていたら、ああも美しくないものを作れるんだ」
「そして、『噂』を広めた者が問題です」
と、クノハル。
「そうね。あの『噂』が流布し始めたのは組織が壊滅した後だったわ。『赤斧帝』が絡んでいると見て間違いはないでしょう」
ユルルアちゃんも頷く。
「唯一の救いは『タイラント』の封印が解かれてない事だろうな。あの化物が解放されたら……今度こそ帝都だけでなく大陸全土が壊滅するだろう」
オユアーヴも頷いている。
クノハルは言った。
「とすれば次の敵の有力な狙いは『タイラント』の封印の解放でしょう。あの精霊獣の封印された場所は……帝国第一高等学院とは小川を挟んだ対岸にある聖奉十三神殿の最深部。それで帝国第一高等学院の生徒まで狙われた、と考える方が自然です。帝国第一高等学院から聖奉十三神殿に侵入するには小川を渡るだけで良いのですから」
ユルルアちゃんはオレ達を見つめる。
「テオ様、『赤斧帝』が現れるやも知れません。お覚悟はおありでしょうか?」
「完了している」とオレ達は断言した。「何が敵であろうと、僕は『シャドウ』として戦う」




