第114話 お詫び。
『閃翔のギルガンド』が額に青あざを作って『黒葉宮』にいきなりやって来たものだから、オレ達は何が起こったのかと驚愕したのだった。
……『峻霜』辺りと激闘したのか?でも『峻霜』はそう簡単に同僚と乱闘するような軽い人物じゃない。帝国十三神将の中で『閃翔』と誰よりも一悶着あり得そうなのは『逆雷』だが、その『逆雷』は今はホーロロ国境地帯の治安の維持のために派遣されているはずだ。
じゃあ、誰がやったんだ……?『閃翔』相手にここまでやったのは何処の何者なんだ!?
「急に参じて申し訳もござりませぬ。テオドリック殿下はロウと言う男をご存じであらせられるか」
な、何だと!?
「牛引の童から……保護者だと聞いている。クノハルの兄でもあったはずだ」
「この傷は……奴にやられたものでございます」
えっ!?一体何があった!?
「『閃翔』が手傷を負っただと……?」
いやいやいや、いつだって冷静な、あのロウがギルガンドを攻撃したのか!?
何があった!?まさか薬物に手を出したのか!?精神的な病気に!?いや、脳に腫瘍が出来たと言う事も考えられる。
「諸事情あって、私がクノハルと騒動になった事が原因でして」
はあああああああああああああああああああああああああああああ!?
「『閃翔』が、騒動!?」
とすれば、ロウもきっと無傷じゃ済んでいないぞ、これは。
後で事情を聞こう。
「……何もかも、面目次第もござりませぬ」
ギルガンドは悔しさを顔ににじませた。
「そ、それより大事ないか?」
「はっ、務めに支障ござりません」
うん……。見るからに元気そうなので、それだけは一安心した。
「しかし、どうしてクノハルと騒動に?もしクノハルが原因ならば、僕も責任を……」
「いえ、私が軽率でありました。ここに急遽参じたのはそのお詫びのためにてございます」
「お、お詫び……」
詫びるほどに、『閃翔』が軽率な事をした?
これは余程の事情があったに違いないから、絶対にロウ達から事情を聞く必要が出てきた。
向こうが誤魔化そうとしたり黙ってやり過ごそうとしても、絶対に話して貰わねばならない。
「詳しくはお話しできませぬ。クノハルよりお聞き下さいませ。では私はこれにて」
「な、何があったんだ。何が……?」
「何があったのでしょうか……?」
ギルガンドが去ってから、オレ達はユルルアちゃんと――呆然と見つめ合ったのだった。




