第113話 視野が狭い癖に選択肢にこだわる
「何をする!」
「死ね!」
遠距離攻撃が失敗したクノハルはギルガンド相手に掴みかかってきた。
「人に向かって死ねとは何だ」
「死ねとは死ねだ!」
「だから何を言っているんだ」
「死ね、死ね、死ねーーーーーーーー!!!!」
「おい、落ち着け」
相手が『閃翔』なので簡単に文官のクノハルは抑え込まれるが、ジタバタと暴れた。
いつもの冷静なクノハルの態度を知っている者が見れば、己の正気の方を疑ったであろう程に往生際が悪かった。
「う、うう、ううううっ……!」
とうとう抑え込まれたままクノハルはシクシクと泣き出した。
「酷い、酷い……!」
「これだから女と言うのは苦手だ。すぐ感情的になって泣き喚く……」
ギルガンドはうんざりして呟いたが、それがクノハルを爆発させた。
「何だと!?暴力しか自慢できない野蛮な男の分際で!天かける生き物は体重に比例して脳みそが遙かに小さいと言う法則は人でも当てはまるのだな!この鳥頭!」
「は?」驕慢なギルガンドの恐ろしく高い誇りのど真ん中を見事に射貫かれて、こちらも爆発した。「貴様!女だからと手加減すれば調子に乗って!」
「図星だったか?ならばついでに教えてやる!鳥の大半は後方には飛べぬ!機を見て引き下がる事が出来ぬ猪突猛進の愚か者と同じだ!」
「この『閃翔のギルガンド』を侮辱して貴様ただで済むと思うなよ!」
「ぎゃ、ぎゃーっ!ロウさん大変ですぜ!クノハルの姐さんがギルガンドさんに酷い事されてますぜ!お、おいら全速力で兵士を呼んできますぜーっ!」
『きゃーっ!ロウ大変よっ!クノハルがあの鼻高ピノキオ超絶傲慢男に乱暴されているわっ!急いで助けないと!ああっ、泣いているわ!あのクノハルが泣くなんてどれだけ酷い事をされたのよっ!!!』
そこに――ゲイブンとパーシーバーとロウが最悪の時にやって来たのだった。
「俺の妹に何をする!」




