第10話 だから他の全人類が不幸せになって構わない
そうだ。私はもっと評価されるべきなのだ。私はもっともっと素晴らしい人間なのだから。そうだ。私はもっともっともっともっともっと尊敬されるべきなのだ。私はもっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっと立派な人間なのだから。
もっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっと――そうだ、こんな程度じゃ私への評価が足りないのだ!
……いや、違う。
何の実力も無い癖に生まれた場所が場所だっただけで崇められている皇帝とその一族を一匹残らず一掃しなければ、私が許せない。
だって私は生まれてからずっと不遇な目に遭ってきたのに、アイツらは生まれてから燦々と日の当たる場所で暢気に生きてきたのだぞ!
だから、これは幸運だと思った。
不出来な第十二皇子に仕えている頭でっかちの女官僚、クノハルが『頭の良くなる薬』を求めてやって来た時には。
「ここに、頭の良くなる薬があると噂を聞きまして」
応対したのは生意気な結婚も不愉快な出世もぶち壊してやったあの若造だった。
「あ、ああ、え、え、え、え、英才のクノハルさんも欲しいんですね」
「ええ……。どこかお体でもお悪いのですか?」
「い、いえ、いいえっ!ちょっと、つ、つ、つ、疲れているだけで、で、で、ですよ」
「そうですか、それでお幾らですか?」
「い、い、い、今だけ……タダでお分け、しししし、しますよ」
「ありがとう」
クノハルが去ってから、私はどうやってクノハルからあの最上級の美味を味わおうか考えた。そうだ、最後に不出来な癖にのうのうと皇族として生きてきた第十二皇子を食べるとして……あのクノハルは生意気だ。
女の癖に、頭が良いと言うだけで!
殿試を突破しやがったのだから!
……ああ、そうだ。
だったら、それなりに痛い目に遭わせてやらねば、この私が思い知らせてやらねばならないだろう。




