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【完結】ガン=カタ皇子、夜に踊る  作者: 2626
First Chapter

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第104話 貴族の務めの一つ

 「実は貴君に見合いの話が持ち込まれているのです」

数日前。レーシャナ姫に呼び出されたと思ったら、そうギルガンドは告げられた。

「……見合いでございますか」

「呪いも解けた事ですし、名門であるアニグトラーンの血を絶やす訳にはいきませんから……」

と言いつつもレーシャナ姫自身があまり乗り気では無さそうだった。

これはどうやら、彼にとってあまり良い縁談では無さそうである。

「何処から持ち込まれたのですか」

「ブラデガルディース……」

高名な大貴族の家である。だがギルガンドは露骨に顔をしかめた。

「年若い召使いが行方不明になる事で有名な所ではありませんか。断ってきます」

「少しだけ待ってくれませんかしら」

そしてレーシャナ姫はギルガンドを招き寄せると、扇に隠して耳打ちした。

「十中八九、『神々の血雫』に絡んでいるのよ」

「!」



 ブラデガルディース家はある女を愛妾として召し上げるまでは、帝国では比較的にありふれた大貴族の家であった。当主サロフは冴えない外見の小男だったが、悪知恵が回って口も上手だったので『赤斧帝』から気に入られ、金勘定も上手かった事もあって家は栄えていた。

二人目の子を成してからすぐに正妻との仲は冷え切り、その憂さを晴らすべく外で女とよく戯れていたものの、あくまでも『遊び』の範疇で済ませていた。

しかし、彼はある日――『運命の女』と出会ってしまうのである。


 その女は春の時期だけに解放される帝国城の百花広場で、年老いた女の召使い一人を連れて、盛りの花の下でゆったりと花見をしていた。

とびきりの美人揃いの高級娼婦達に大金を払って外出させ、自慢そうに連れ歩いていた彼でさえも――その儚げでありながら妖艶な、正に絶世の美貌に一目で心奪われた。

「あれはどの果報者の御妻女だ?」

庭を掃いていた庭師の爺に訊ねると、

「あの御方はゼーザ第一等武官の御夫人でございまする」と返事が来た。

「なるほど、ご立派な御方の御妻女であらせられたか」

帝国の皇帝である『赤斧帝』に身の程も知らず意見する程にご立派な――と言う嘲笑と皮肉は隠して、それからも彼は娼婦達と戯れつつ、敷物の上で酒と花見を楽しむふりをしながら目の端でゼーザ夫人を舐めるように見つめていた。

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