第99話 いちゃラブ
昼休みの帝国第一高等学院の保健室には滅多に人が来ない。誰もいない事を確認して、寝台の上に寝そべりながら、オレ達はユルルアちゃんの膝枕でウトウトと微睡んでいた。
「ねえ、テオ様」
どうしたんだろう。オレ達は薄っすらと目を開ける。
「……ん?」
「私は清らかでも、美しくも、優しくもなくて……むしろ汚くて醜くて残酷なのに……どうしてテオ様は私を愛しんで下さったの?」
「決まっているだろう……僕が死ぬ時に、絶対に君に僕の手を握っていて欲しかったからだ。いくら清らかでも、美しくても、優しくても、君でなかったら断じて嫌だと思った。
それに、君の魅力はそう言う一般的な美点や長所だけにあるのではない。汚くて醜くて残酷な君も、僕は欲しいし、どうしても僕に必要なのだ。
でも、もし君が汚いままが嫌なら僕が清めるし、醜いのが嫌ならば美しくするし、残酷であるのが嫌なら慈悲深く変えてみせる。
だからどうか僕の側にいておくれ、ユルルア」
「……ねえ、テオ様」ユルルアちゃんはオレ達の顔を仮面越しの優しい目で見つめる。「子を妊み産む事は女にとって死をも覚悟する最大の試練ですわ。でも私、テオ様のお子なら何人でも産みます、この命をかけてでも絶対に産んでみせます。産んで、慈しんで育てて見せます。ですからどうか……」
ユルルアちゃんの手がオレ達の心臓の上に置かれて、そっと撫でた。
実に、大変に、嬉しいお誘いではあるが――。
「それは結婚をして夫婦になってからにしよう。そもそもこの学院は学問と教育をする所だ」
「まあテオ様……。お酷い方ですわね。もう、もう!」
拗ねちゃったユルルアちゃんの白い指がオレ達の頬を厶キュッとつねって、ギューギューと引っ張ったのだった。




