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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
最終章 

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最終話 次の冒険へ?(本編完結)

これにて本編完結です。

「――という訳でスラットさんから言われた通りにして、ボクとエッ君は隠し部屋にあった逃亡用の魔法陣から無事に脱出することができましたとさ」


 と、口にするのは簡単だけれど、残り時間がどんどん減っていく中での活動は半端じゃなかった。いやもう、プレッシャーと焦りが物凄いのなんの。最後の方では指先が震えてくる始末だったよ……。もしも詳しい場所を教えてもらっていなければ、今頃は海のモズク、もとい海の藻屑となっていた可能性が大です。

 スラットさんには感謝する一方で、カッコつけた別れの挨拶をしていた少し前の自分は張り倒したくなってしまっていたけれど。いやはや、場の雰囲気に流されるのって怖いよねえ。


 そんなボクの回想録を聞いていたミルファあんどネイトはというと、なんだか疲れた顔でため息を吐いていた。

 ちなみにエッ君並びにうちの子たちの再会は、お互いに「お疲れー」と挨拶するだけのドライなものだった。今は『ファーム』の中でのんびりとしているのかしら。まあ、別れてからまだ二日しか経っていないのだからそんなものなのかも?


「本題はすぐに片付いて、逃げ出す当ての方も見事的中させていたというのに……」

「想定外の邪魔が入って、結局時間ギリギリになってしまうだなんて……」


 言葉を途切れさせてこちらを向いた二人の顔は、なぜだか(あわ)れみに満ちている気がした。


「とてもリュカリュカらしいですわ」

「すごくリュカリュカらしいですね」

「どういう意味かな!?」


 その言い様には異議を唱えたいところだよ!


「そう言われましても、ねえ?」

「はい。いつも何かしらトラブルに見舞われたり、逆に問題事に突撃して行くじゃないですか」

「え、ええー……。そんな風に思われてたの……」


 仲間たちからの辛辣な評価にマジ凹みしそう……。というか、トラブルというかイベントが寄ってくるのはプレイヤーの仕様だからだと思う。


「ところで、『天空都市』からの脱出までにかかった時間は、わたくしたちと別れてから一時間ほどしかありませんわよね。そこから今までの間、あなたはどこで何をしていましたの?」

「え?それはもう転移した先から身近な人里にまで移動して、そこからさらに『転移門』がある町にまで――」

「リュカリュカ。誤魔化さずにちゃんと言いましょうね。脱出した先で、あなたは何を発見したのですか?」


 う……。ネイトさん、笑顔の割に圧がすごいです。ミルファも「早く話せ!」とせっつく雰囲気が駄々洩れになっているし……。


「え、えっとね、さっきも言ったように逃げ出すの使った魔法陣というのが、あの性悪魔法使いの部屋に設置されていたものなのね。だから転移した先もあの魔法使いの隠れ家みたいなところだったのよ」

「……この時点でもう嫌な予感しかしませんわ」

「同感です。できることなら続きを聞きたくはないですね……」


 二人とも勘が良いね。まあ、『天空都市』の人々を死霊にした張本人みたいなものだしねえ。そんなやつの隠れ家と聞けば、碌な物がないと思ってしまうのは当然かな。本心を言えばボクも黒歴史並みになかったことにしたい出来事だよ……。


「で、そこにあったのがコレ」


 アイテムボックスから取り出したのは古めかしい二冊の本で、それぞれのタイトルがこちら。『猿でもできる邪神召喚』、『今日からあなたも大魔王!~禁呪シリーズその三『毒属性魔法』~』。


「書名からして厄介さしか感じられませんわ……」

「三とナンバリングがされているということは、この禁呪シリーズには最低でも残り二冊があるということですか……」

「中も見てみる?」

「絶対に嫌ですわ!」

「死んでも見ません!」


 即答だったね。知ってたけど。


「それで……、これをどうするつもりですの?先に言っておきますけれど、クンビーラで保管することは不可能でしてよ」

「戦争の火種になりそうなことを頼んだりしないから」


 中身が本当にタイトルの通りであれば、世に出てしまえばこれらの本を巡って大戦争が巻きこされかねない。だからこそ頭を抱えて悩んだ末に隠れ家から持ち出してきたのだ。


「とりあえず、アコの迷宮の奥深くにでも封印しておこうかなって」

「ふむ……。『ファーム』に入るためには持ち主であるリュカリュカの許可が必要ですし、さらにその中にあるアコの迷宮の奥深くであれば、簡単には手出しできそうもありませんね」

「下手な宝物庫よりはよほど安全そうですわね」


 お、二人とも賛成してくれそうだね。レアアイテムを迷宮に抱え込むことでアコの能力がパワーアップするかもしれないのだけれど、そこまで詳しく言わなくても良さそうかしらね。


「ふう……。一応処理する目途が立っているなら一安心ですわね」

「禁呪シリーズの残りが気がかりではありますけど」

「それは追々探していけばいいよ」


 そのうち次のクエストが舞い込んでくるだろうしね。ただ、しばらくはクンビーラの中で食べ歩きをしたり、だらけたブラックドラゴンを見たりと、のんびり過ごしたいところだわ。


「お、ほんまにリュカリュカもおるやん」


 そこへ割って入ってきたのはエルフの美少女にしてクンビーラの凄腕諜報員のエルだった。相変わらず世界観を台無しにしそうなカンサイ弁も健在なようで。


「エル、おひさー」

「はいよ、久しぶり。あー、無事を確認し合っとるとこ悪いんやけど、ちょっとお城まできてもらえんやろか」

「お城に?今すぐ?公主様たちへの報告は近日中にするつもりだよ?」


 『天空都市』にまつわる一連のイベントの発端はクンビーラからの依頼だったからね。ミルファがパーティーメンバーに居ることを抜きにしても報告は必要だろう。

 あ、ちなみにボクたちが居るのは定宿にしている『猟犬のあくび亭』の食堂です。そんなところで人に聞かれるとまずい話をするなって?大丈夫。昼下がりの今の時間帯は宿泊客も出かけていて貸し切り状態になっているから!


「そっちはそっちでやってもらいたいんやけど、その前に相談事があるんや。なんやまた『武闘都市ヴァジュラ』がけったいなイチャモンつけてきてな」


 おや?どこかで聞いたことがあるような?


「自分のとこにある遺跡から盗みを働いたやつがおるとかどうとか言うてきてるんよ」


 刹那、二対の瞳がボクを射抜く。


「リュカリュカ……」

「違う違う!確かにあの隠れ家があったのはトライ村に向かう北街道沿いの村近くだったけど、ヴァジュラの支配地域からは離れていたよ!」

「その村の場所と名前を詳しゅう教えて。……ははあ、なるほど。独立した地域やからこれを機に実効支配してやろういう魂胆か。ついでに難癖付けてクンビーラに攻め込む口実にでもする気やろな」

「なんですって!」


 ほほう。喧嘩を売ろうってことですか、そうですか。 


「いい加減、ヴァジュラの連中には身の程ってものを教え込む必要がありそうだよねえ」

「賛成ですわ。クンビーラに攻め込もうなどさせる訳にはまいりません!」

「ヴァジュラの支配地域が広がれば都市国家間の力の均衡が崩れてしまうかもしれません。これがきっかけになって戦乱が始まらないとも限りませんし、防げるならそれに越したことはありませんね」


 こちらの気も知らずに勝手なことを言われて正直イラっときたよ。加えて夢の話があったからなのかミルファとネイトもやる気、いや、殺る気になっている。


「な、なんやよう分からんけど、乗り気になっとるみたいやな」

「任せて!けっちょんけっちょんにしてあげるから!」

「ま、まあ、ほどほどで頼むわ……」


 こうして次の物語が始まっていくのだろう。

 そう、きっとこれからもずっと……。


 追記。この後ボクたちは闘技場で二百連勝した。



                             おしまい

まずはここまでお読みいただいた皆様に感謝を。

途中、中断したり更新頻度が落ちてしまったりと、読者の方々には心配をおかけしてしまったこともありましたが、何とかここまで書ききることができました。

作者としてもリュカリュカちゃんの元になった『アイなき世界』が中断したままになっているので、こちらを完結まで書き切ったことは一つの自信となりました。改めて本当にありがとうございました。


さて、これからですがエッ君?が主役の番外編だとか別作品の構想だとか色々と頭の中に浮かんではいるのですが、現在どれも未定という状態です。

『アイなき世界』はどうにかして完結させたいとは思っているのですが、モチベの方がなかなか上がらなくて……。

とにもかくにも、これからも執筆活動は続けていく所存ですので、見かけた際にはよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 完結おめでとうございます。 完走お疲れ様でした。  1番規模の大きいと思われるシナリオが終わった所で区切るのは英断。  残りはどうせ消化試合なんだから、省略したほうが冗長感が無くていい…
[一言] 完結お疲れ様です。テイマーちゃん連載初期(ブックマーク追加順的に2018年9月頃?にアイなき世界一気見して、10月中頃にテイマーちゃんの存在を知って読み始めた感じでしたね)から読んでいた身と…
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