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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第八章 一人目の仲間

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91 休載のご案内(雑談回)

 『OAW』はプレイヤーごとに異なる世界を持つゲームであるが、オンラインゲームを元にしていたということもあり、ゲーム内でのアバターのまま交流ができる場所が存在する。


 プレイヤーの街とも呼ばれる『異次元都市メイション』である。

 そんなメイションの中でも特に活気があるのが、飲食料品を提供する食堂や酒場の類だ。いくら飲み食いしても体調に影響を与えないそれらは、VR技術上最悪の欠点と呼ばれると同時に最高の利点とも言われている。


 この点に関しては、立ち位置の違いや視点の違い、さらには考え方の違いから一概にどちらが正解だとは言えない。

 言えないのだが、中には自身の言い分こそ絶対だとして頑として譲らない者たちもいて、不毛な争いをリアルで定期的に続けたりしていた。


 それはともかく、メイション内屈指の名店として知られる酒場兼食堂の『休肝日』には、今日も今日とて多くのプレイヤーたちが足を運んでいた。

 だが、にぎやかな店内である一角にいる者たちだけは異様な静けさを保っていたのだった。


 そのことを不審に思ったオーナーのフローレンス・T・オトロは、いつものように給仕のフローラとして様子を探ることにしたのだった。



「あの、お客さん?うちの料理に何か問題がありましたか?」


「うん?ああ、フローラちゃんか」


「悪いな、そういうつもりじゃなかったんだが……」


「ああ。少し嫌なことっていうか、残念なことがあったんだよ」


「残念なこと?もしよろしければお聞きしてもいいですか?」


「秘密でも何でもないから構わないぜ。プレイヤーならすぐに調べられることだしな」


「おい、フローラちゃんは……」


「あ……。そうか、NPCだったか。……んん?NPCと言っても、メイションではプレイヤーが色々とぶっちゃけた話をするから、配置されているのは特別製となっているんじゃなかったか?」


「そうですよ。私たちは各ワールドのNPCとは違って、リアルの情報やゲームのことなどについて学習させられています。『OAW』が運営しているものだけという制限はありますけど、プレイヤーの方々と同じようにネットを閲覧して情報を独自に仕入れる事もできます」


「いや、さらっと教えてくれたけど、それって実はすごくないか?」


「すげえよ。だから『笑顔』の時からAIの特許がどうとか騒がれていたぞ」


「へえ、そうだったのか」


「結構騒がれていたはずなんだがなあ……」


「うちはリアルだとかなり辺鄙(へんぴ)な所で、数年前まで情弱だったんだよ」


「なるほど。どういう理屈だか事情だか知らないが、あの話題はテレビとかマスコミはさっぱり取り扱っていなかったからな」


「も、もしや某国の陰謀――」


「それはない」


「せめて最後まで言わせてくれよ」


「お客さんの面白くないネタはともかくとしてですね。皆さんが暗くなっていた理由は何だったんですか?」


「面白くないって言われた……」


「フローラちゃんって、実は毒舌キャラだったのか……」


「はいはい、そこ。話が進まないから。あのね、フローラちゃん。私たちが沈んでいた理由はこれよ」


「なになに……、ああ、『テイマーちゃんの活動日記』ですね。それが何か……、え!?休載のお知らせ!?どうしてでしょうか?評判は悪くなかったと思うのですが……」


「そうなんだよ!テイマーちゃん、どうやらVRどころかゲーム自体が久しぶりみたいで、俺たちみたいなゲーム慣れした人間からすると突拍子もないことをやり始めるから面白かったんだよ!」


「たまに、普通の常識すら怪しいようにも思えるけどな。最初のスラムに迷い込んだこととか」


「だからそれはゲームだから安全っていう気持ちが働いたからだという結論になっただろう」


「まあ、こんな感じで言い合いをする私たちほどはまっちゃった人間はそう多くはいないだろうけどね」


「それでも『テイマーちゃんの冒険日記』は人気記事として上位をキープしていたはずなんだ」


「それがいきなり休載とか、一体どうなっているんだって話だよ!」


「そ、そうだったんですか……」


「ちょっと、落ち着きなさいよ。フローラちゃんが引いてるわよ」


「うおっと、悪い」


「ごめんな、フローラちゃん」


「いえいえ。でも皆さんが落ち込んでいた理由が分かって良かったです。てっきり私はうちの料理がお口に合わなかったものだとばかり……」


「いやいやいやいや!それは絶対にない!」


「『休肝日』の料理って、リアルの下手な店よりもよっぽど美味しいし」


「間違いなく俺が作るより美味い!」


「ちょっと待て。お前、リアルでは厨房の仕事をしているって言っていなかったか?」


「厨房関係の仕事、な。設備とか器材の方だよ」


「あ、なるほど」


「それでも、そういう仕事の人間が料理下手って聞くだけでイメージダウンになるんだが……」


「その理屈だとハンバーガーショップやコーヒーショップで接客のみのアルバイトやっている人間ですら、料理上手じゃなくちゃいけなくなるからな」


「すまん。まったく料理できないのに、ファミレスでバイトしていたことがある……」


「と、まあ、言いがかりレベルな偏見となってしまう訳だよ、ワトスン君」


「誰だよ、ワトスンって。だけど言いたいことは分かった」


「あのー、盛り上がっているところを恐縮なのですが……。テイマーちゃんの件で運営から追加の告知が出ているみたいですよ」


「な、なんだってー!?」


「え、ここでそのリアクションを使うの?」


「そんなどうでもいいことより内容の確認が先だ!」


「…………」


「…………」


「…………」


「…………」


「なんだ、本人のリアルの都合だったのか……」


「ログイン自体ができなくなるんじゃ、報告も何もないわよね」


「エアプで適当なことを書くと批判が大きいし、運営もそれなら最初から休載と出す方が良いと判断したんだろうな」


「あえて失敗点を挙げるなら、休載の理由を明記しなかったことか」


「それだって、テイマーちゃんの個人情報を保護するためだったかもしれないぞ」


「だよなあ。単純に失敗とは言い切れない」


「後は休載の期間だけど、一応、一カ月くらいという目途が立っているのも朗報ね」


「無事に再開してくれるのを祈るのみか」


「それじゃあ、理由も分かったことですし、再開祈願も兼ねて乾杯するとかどうですか?」


「フローラちゃん、商売が上手いなー。だけど乗った!全員新しく飲み物を注文しろー」


「え?おごり!?」


「やった!」


「ゴチになります!」


「ちょっ!?待て、お前ら!」


「はーい、それじゃあ、注文を受け付けますよー」


「待って、フローラちゃん!ねえ、お願い!」



 そして『休肝日』はいつもの賑わいを取り戻していくのだった。


休載は作中内部でのことでした。びっくりしました?

次回、1月7日(月曜日)からは普段通りの一日一回18:00の更新となります。



『OAW』の元になったオンラインゲームのタイトル、

『Other World On-line』。略して『OWO』。

その略称から『笑顔』という通称になりましたとさ。


こういう言葉遊びって好きなんですよ。

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