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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第五十二章 異世界の人、過去の人

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875 クリア条件の変更

 凸凹コンビが移動できないことから、二人がこの無限ループな閉鎖空間の一部となっていることが実証されてしまった。


「そういう意味でも時間が巻き戻る仕様は都合が良かったんだろうと思う」

「決着を付けさせないまま、戦い続けさせるためですね」

「そして俺たちはその目論見通り戦い続けていたって訳だ……」


 それが果たして正解なのかどうかはこの醜悪な罠を仕掛けた本人しか知らないことなので、その点についてはもう深く考えるだけ無駄だろう。それに何より、ボクたちにとって重要なのはこの後のことだ。


「問題はこれを解いたときにあなたたち二人の命がどうなるか分からない、ということかな」


 あくまで無限ループの発展形だとするならば、クリアするための方法自体は至極単純で正解の道を進めばいいだけとなる。

 だけど、そうなった時に二人はどうなってしまうのだろうか?


 今の時点ですぐに思い浮かぶ展開は三つだ。

 一つ目は、罠が効力を失って二人は解放されるというもの。ウラシマなタロウさん状態にはなってしまうが、一応はまだハッピーエンドの部類だと言えると思う。


 二つ目、罠自体は解除されずにその場に残り続ける。当然二人もそのままで、時間が巻き戻ることでボクたちとこうして話していることもなかったことにされるだろう。

 余談だけれど、今はボクたちという部外者が入り込んでいるために時間を巻き戻すことができないのではないか、と推測しております。

 ぶっちゃけるとゲーム的な仕様なのだろうが、それ言ってしまうと色々と身も蓋もなくなってしまうので。


 話を戻そう。最後の三つ目、罠と共に二人もまた消滅してしまうというもの。ある意味最悪だけれど、こんな人を人とも思わないような仕掛けを起動させたやつだ。後味の悪い(うつ)展開が起きても何ら不思議ではない。


「ああ、そういう目的のためなら手段を選ばないくそ野郎なら、何人か心当たりがあるぜ」

「……こちらもです。恥ずかしい話、反乱勢力は一枚岩ではありませんでしたから、わたしのことを疎ましく思っていた者たちも少なくはなかった。最終決戦の直前で国家打倒のビジョンが明確になってきたことで、その後の主導権争いが始まってしまったとも考えられます」


 およそ百年前には、この時の反乱側に与した三つの大領主の系譜から生まれた大国が『風卿エリア』を舞台に『三国戦争』という大規模な戦争を行っているくらいだ。

 昔から潜在的な敵愾心やら何やらをそれぞれが持ち続けていたのだとしても納得の話だわね。


「話を聞いている限り、お互いの一部の連中が結託していた感じかな?」

「いや、これがある限り『神々の塔』へは進めないんだから、おれたち国家の方が利は大きい。おおかた反乱側の連中はうまく乗せられたってところだろう。俺の知っているあいつならその程度の後ろ暗いことなら難なくやってのけるはずだぜ」


 うわー……。それはまた敵にすると厄介だし、味方にもいて欲しくないタイプの人だわね。凸凹コンビはどちらも一本調子な気質のようだし、どちらの立場からでも相性は良くなかったのではないかな。……ああ、だからこそこうして生贄のような形で罠にはめられたのか。


 ただ一点その人物としても誤算だったのは、それでもなお『大陸統一国家』が滅亡してしまったことかしら。今でも浮遊島改め『天空都市』を死霊になってさまよっているのかもしれない。そうだとしたら自業自得とはいえ哀れな話だ。

 同時に、どうして滅亡したのか?という新たな疑問が浮かんでくるけれど、それはまた後でゆっくり考える事柄だわね。


 一方で、のせられた反乱側の誰かがどうなったのかは不明だけれど、英雄視されて象徴扱いされるほどの人をはめたのだ。いずれはバレて報いを受けることになっただろう。


 さて、悪党どもの末路はともかくとして、本題のクリア時の展開だ。これだけの仕掛けに加えて、両勢力の重要人物二人を生贄に使用していることから、正攻法のクリア方法ではこの罠そのものが消えることはないと思われます。いや、だって使い捨てにするにはもったいないでしょう。

 今の今までこうして残り続けてきたのだから、的外れな予想ではないと思う。


「だから仮にこのままボクたちを通り抜けさせてくれたとしても、二人はこの閉鎖空間に閉じ込められたままになるんじゃないかな」

「う、うん。とても分かりやすい説明だったよ……」

「もったいない精神でこんな不快な気分にさせられるとは思わなかったぜ……」 


 ……言い方がよくなかったことは認めるけれど、取り繕っても仕方がないと思うの。


「はいはい。凹んでいても状況は改善したりしないよー。別のクリア方法を探しましょう」

「そんなものがありますの?」

「こんな閉鎖空間を媒体も何もなしに構築できるとは思えないからね。起動展開維持するためのアイテムがどこかにあるのが普通だよ」


 彼らの会話の中でも、『天空都市』にはマジックアイテムが収蔵されていた、といかにもな台詞があったことだしね。

 もしもそうしたアイテムに頼らずに作り上げたのだとしたら?……うっかり亡くなっているか、死霊になったことで弱体化していることを期待する。


「待て。どうしてそこまでする?お前たちからすれば俺たちは縁もゆかりもない遠い過去の人間だろう」

「彼の言う通りです。我々のことなど放っておいて、君たちのやるべきことをなすべきではありませんか?」


 気が遠くなるほどの昔だから、探せば何かしらの縁くらいは見つかるかもしれないが……。まあ、彼らが言いたいのはそういうことではないわよね。


「探せば理由はいくつでも挙げられるよ。今後のためにも性質の悪い罠への対策を知っておきたいだとか、負の遺産はきっちり根っこの部分から処理しておかなくちゃいけないだとか」


 放置したまま先に進んだせいで、いつか誰かがこの無限ループに引っかかって抜け出せなくなった、なんてことにでもなったら目覚めが悪いもの。


「だけどまあ、一番の理由は……」


 そう、先に挙げたものも間違いなく本心ではあるけれど、本音ではない。


「気に食わないんですよね。他人を陥れて悦に浸っているやつがいるのって」


 しかもそういうやつに限って自分が一番優秀だと思い込んでいるのものなのだ。


「だから罠ごと全てを打ち破ってお前なんか全然大したことないんだ、って鼻を明かしてやりたいんですよ」


 性格が悪い?そこは反骨精神が旺盛だと言ってもらいたいかな。


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