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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第五十二章 異世界の人、過去の人

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869 安穏とした生活と怒涛の始まり

 エセグリフォに続いてバロメッツまで撃退したボクたち。うちの子たちもドロップしたお肉類にほくほく顔です。ボクとしても海産物が手に入るのは非常に嬉しい。何気にこれまで入手手段がなかったのだよね。これでお料理の幅も広がるというものです。


 ……さすがに生食のお刺身は、みんなにはドン引きされたけれど。美味しいのに。リアルと違ってあたる心配がないので割とすんなり受け入れてもらえるのではないか、と思っていたのでちょっぴり予想外だったよ。


 そうそう、お肉以外の物をドロップする魔物もちゃんといるから栄養面の心配はご無用ですよ。その名も『ムービングツリー』。名は体を表すを地でいく魔物で、見た目はまさに動く木だった。草原といえども所々に灌木(かんぼく)が生えているし、小さな林になっているところもある。ある意味一番奇襲に用心しなくてはいけない魔物でもあった。


 元々は植物だからなのか移動は得意ではないようでかなり遅い反面、(ふち)が鋭利になった葉っぱを飛ばしてくるリーフカッターに、しなりのある枝を振り回してくるブランチヒット、いきなり地面の下から飛び出してくる根っこアタックと多彩な攻撃手段を持っている。

 緩慢な動きに気を緩めているといきなり足元から根っこが飛び出してきたり、刃物のような葉っぱが飛んできたりする危険なトラップのような相手なのだ。


 あと、これは『OAW』ではなく『笑顔』の方での情報なのだけれど、遠目では雑木林にしか見えないような超巨大な個体が出現したこともあるらしいです。強さの方も大きさに比例していたそうで、複数パーティーが協力してようやく倒すことができたとのこと。

 当初は新規追加されたレイドボスなのではないかという噂も立ったのだそうだ。もちろんごく普通?のポップアップモンスターだった訳ですが。


 ただ、出現場所がプレイヤーたちが集まりやすい場所だったとかで、ポップアップモンスターだと判明してからはレイドバトルの練習台として重宝されるようになったらしい。MMORPGのプレイヤーたちは逞しいね……。


 話を『OAW』に戻しまして。今のところこちらでは特殊なムービングツリーの出現報告はない。が、『笑顔』とは多くのデータを共有しているから絶対に出現しないとは言い切れないと思う。長寿ウロコタイルみたいな特殊な個体もいたことだしねえ……。

 まあ、移動速度が遅いのは巨大化しても変わらないらしいので、いざという時には逃げるのもアリかしらん。


 おっと、忘れるところだった。実はムービングツリーにはもう一つとても厄介な特徴があった。それは……、ドロップアイテムの種類が野菜からフルーツからキノコに至るまで幅広過ぎて、狙った食材が手に入りにくいことです!

 いや、これ本当に結構厄介なのよ。野菜が欲しいと思っているときにフルーツが出てきた時のコレジャナイ感といったら!逆もまたしかりです。

 いやはや、英さんが家庭菜園で色々と育ててくれていて助かったよ。


 このようにドロップアイテムが食べ物系に偏っている一方で、採取できるものは薬の原料になるものばかりだった。〔調薬〕がはかどることはかどること。

 これまでは熟練度が上がって新しいアイテムが作れるようになっても原料や素材が足りなくてお預けになるということがざらにあったのだけれど、ここではそれらの材料類まで取れてしまうため、高ランクの薬品類の製作が途切れることなく行えたのだった。


「ここまで至れり尽くせりですと、何か裏があるのではないかと疑ってしまいますわね」

「そうだねえ……」


 実際は街や村がないことへの補填というところだろう。逆に「これだけ揃えているのだからここから先は自力で頑張れ」という運営の無言のメッセージとも捉えられる。

 ボクたちの冒険も、そろそろ終わりが近づいているのかもしれない。もっとも、そのためにはまずこのエリアを踏破して『大霊山』にまでたどり着かなくてはいけない訳ですが。

 ここまで近づくともはや柱というよりも壁のように感じられてしまう。距離感がさっぱりつかめなくなるので、大き過ぎるというのも問題だわ……。




 結局『大霊山』のふもと、むしろ根本?に到着したのはそれから数日後のことになる。睡眠時以外はあえてスキップ機能を使用せずにいたこともあって、リアルの方では初夏へと季節が移り替わっていた。

 つまり、いつの間にか『OAW』のプレイ開始から丸一年が過ぎていたのだ。まあ、ログインボーナスがある訳でもなければ、記念品が贈られるといったこともないので、だからどうしたという話でしかないのだけれど。


 リアルの生活はどうなっているのか?

 それが驚くくらいに何の変化もないのよねえ。一番の理由はあれだね、クラスメイト達が変わり映えのしないメンバーのままだということにあると思う。問題なく二年生へと進級したのだけれど、ボクが所属しているのは特進クラスなので、他とは違ってクラス替えは行われなかったという訳。


 その中でもあえて言うなら、雪っちゃんのように部活動にも頑張っている子たちが昨年以上に忙しくしていることだろうか。うちの学校は歴史が浅いこともあって強豪校には程遠い。そのためか二年生が主力となって活躍している部も多いのだとか。

 なんにしても、怪我にだけは気を付けてもらいたいものだね。


 他には里っちゃんが二年生ながら学生会長に推されている、といった噂が聞こえてきているね。あちらの学校では二月に新体制へと移行したばかりだったはずなのだが、一体何がどうなっているのやら。

 彼女が話題にされるのはいつものことではあるけれど、意外とストレスをため込む気質だからなあ……。折を見て吐き出させてあげる機会を作ってあげた方がいいかもしれない。


 こんな調子でリアルの方は平穏無事な毎日だ。よはなべてこともなし、ってね。果たしてその反動だったのか、ゲームの方では怒涛の展開を迎えることになる。


「今日こそ貴様を倒して我は先に進むぞおお!!」

「ぬかせ!我がいる限り何人もここは通さん!!」


 向かい合って宿命のライバル的な台詞を口にしていたのは、体格的に凸凹なコンビだった。一人はひょろりと背が高く、もう一人はどっしりと重量感がある。

 後から思い返せば、この濃ゆーい二人組に出会ってしまったことが、その始まりだったのだろうなあ……。


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