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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第五十章 トライ村では二騒動?

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847 減っていくから消耗品

 ここは任せて先に行け!という台詞はなかったけれど、トライ村内部のごたごたはおじさんたちに任せて、今日も今日とてボクたちは採取と討伐に精を出していた。

 幸い、一番の難敵だったレッサーヒュドラは解毒系のアイテムをぶちまけることで弱体化させられることが判明したので、苦戦することはあっても全滅してしまうほどの危機に陥ることはなかった。


 苦戦の原因?二番目に面倒なウロコタイルのせいですよ。純粋に堅くて強いいわゆるフィジカルモンスターだから小細工を(ろう)する余地が全くないのだ。

 草原や荒野のように広く動き回れる場所があるなら逃げ回ってスタミナを減らすという手も使えたかもしれないのだが、あいにくとここは視界と動きが制限される森の中。しかも地面は湿地帯でこれまた移動範囲が限られているという悪環境ときている。

 結局、正面からぶつかり合うガチンコ勝負となってしまうので、どうしても消耗が激しくなってしまうのだった。


「ふいー……。みんな平気?怪我とかしてない?」


 今回エンカウントしたのはレベル三十越えの個体ということで、これまで倒してきたウロコタイルに輪をかけて堅い防御力を誇っていた。いやはや、ネイトの強化魔法がなければ文字通り刃が立たない(・・・・・・)ところだったよ。


「わたくしは大丈夫ですわ。ですがこう堅牢な相手ばかり出てくるとなると、鈍器系のサブウェポンを持つことも考えた方が良いかもしれませんわね」


 りーヴのように全身鎧を着込んでいたり、ウロコタイルのような堅い皮革や鱗などに覆われている相手には、斬撃や刺突よりも打撃系統の攻撃の方が効果が高いのだ。しかし、


「つけ焼き刃で通用するとは思えないけど?技能を習得するために時間がかかっているようじゃ意味がないよ」


 かといって技能もなしに碌に扱えない状態で実戦投入するなど愚の骨頂だ。互角に近い戦いができれば御の字で、最悪「あーれー!?」と鎧袖一触でお星さまにさ(やら)れてしまうかもしれない。


「アタッカーの仕事ができなくてミルファが焦る気持ちも分からないではないけど、二枚目の盾役としてはしっかり機能してるし、パーティーへの貢献は十分にできているんだから変に思い詰めたりしないでよ」

「……分かっておりますわ」


 ボクの言葉にぷいと顔を背けるミルファ。あー、これはあれだね。頭では理解して(わかって)いるけれど、心の方は納得できていないというやつだね。

 まあ、盾役一枚目のリーヴに比べると頑丈さという面では大きく異なるからねえ。それこそ盾と防御用短剣の違いであり、攻撃を止めるのと受け流すという動きの違いだから、全く同じ働きができなくて当然なのだけれど。

 どうしてもあの子への負担が大きくなっているため、忸怩たる気持ちになってしまうようだ。


 ここでしっかりと言い聞かせて妥協させることもできなくはないが、こういうことは結局、自分で折り合いをつけないとしこりが残ったりするからなあ……。さらに上手く吹っ切ることができれば大きな飛躍にも繋がるのよね。


 俗に「壁を超える」と言うと、自分一人でよじ登るとか、強引なところでは突き崩す(ブレークスルー)とかいった正攻法でクリアするというイメージが付きまといがちだ。だけど本当は誰かに助けてもらってもいいし、道具を使ってもいい。ぐるりと迂回したっていいのだ。

 もっと言うと、別に壁の向こう側に進むことだけが正解ではないのだよね。重要なのは壁を超えることではなく、壁を前にして立ち止まらないこと、挑む気持ちを忘れないこと、考え続けて動き続けることなのだ。


 ミルファにとって今がその時であり、ずずいと羽ばたくことができるかどうか、試練の時でもあったのです!


「無茶をしてもフォローができるように、そっと見守ることにしますか」


 うちの子たちの中でも相性がいいエッ君にくっついてもらうようにすれば、そうそうピンチが危険でヤバいことにはならないでしょう。

 あ、ネイトには基本ミルファ本人にお任せだけど、助けを求められたらすぐに動くという方針を伝えておかないと。


 ……そういえば、あの子はあの子で何か抱えているものがありそうなのだよね。掲示板とかに漏れ出ている情報によると、どうやら以前に所属していたパーティーがらみのことらしいのだが、そのあたりの話は全くしてくれないからなあ。

 彼女の故郷の村にも関連しているようだけれど、それも話題に上がるのは魔法の先生である神官さんのことばかりときている。いつかそれらのことに向き合う日がくるのだろうか?その時にボクは、ボクたちはネイトの助けや支えになることができるのだろうか?


 不確定な未来のことにばかり意識を向けてはいられない。ここは魔物の生息地なのだ。


「消耗品の残量はどう?」


 さらりとミルファのことを告げてから、ネイトとの会話の本題に入る。


「今日は比較的強めの個体とばかり遭遇しているので、回復薬などHP回復系のアイテムが半分を切っています。解毒薬はまだ余分がありますが、レッサーヒュドラの危険性を考えると、そろそろ帰還を考えるべきだと思います」


 回復魔法に専念してもらえれば多少は余裕が出るかもしれないが、ネイトの強化魔法は現状対ウロコタイル戦の要となっている。さらに水属性を持つ魔物ばかりなので、これまた彼女の土属性の攻撃魔法は切り札になり得る。そうした理由から回復はもっぱらアイテム頼りとなってしまっていた。

 ついでに言うと、ドロップアイテムをしまうアイテムボックスの空き容量も心もとなくなってきていた。このままだとせっかく魔物を退治しても素材類を持ち帰れない、なんてことになるかもしれない。


「無理をしてもいいことないし、ネイトの言うようにそろそろ帰る方が無難かもね」


 森を越える訓練のためにキャンプをして夜の森にもなれなくてはいけないのだけれど、現在の状況ではリスクの方が大き過ぎる。今日のところは準備不足と想定不足を素直に認めて、トライ村へと戻るべきだろうね。


「大陸中をあちこち旅してまわって、結構慣れてきたと思ったんだけどね。冒険者稼業も奥が深いや」

「簡単に極められるものなんてありはしませんよ。それでも一歩ずつ前に進んでいくしかないんです」

「あ、その台詞なんだか先生っぽい」

「当たりです。わたしの村に赴任してきた神官様、先生の口癖ですね」


 破天荒なクシア高司祭(おばあちゃん)のお弟子さんとは思えない堅実なお言葉だねえ。 


作中でリュカリュカちゃんたちは適切に、時には豪快にアイテムを使用していますね。


ですが、実は作者の私は重度のラストエリクサー症候群を患っていたりします。

とにかく「減る」というのが嫌でして、入手数が限られているアイテムはおろか、攻撃系の消耗品ですらめったに使えないという有様だったり……。



あまり機会はありませんが、このようなあとがきへの感想などもお待ちしております。

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[一言] CO-OPの為なら使いまくれ!(メガテン脳)
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