表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第五十章 トライ村では二騒動?

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

843/933

843 依頼品と魔物素材と

 小細工をされたりしないように、買取カウンターではなくテーブルの上へと採取してきた依頼品を出していく。ちなみにこのテーブル、休憩や雑談ができるようにと壁際に置かれていたものです。


「……こいつは驚いた。どれもこれも最高品質じゃねえか」


 最初に気が付いたのはやはりというべきか、『香辛料採取の達人』とまで言われていたおじさんだった。


「全部だと?」

「やるじゃないか」


 それに釣られるようにして、集まっていたベテランたちや年配の協会職員たちから感嘆の声が上がる。採取するのに苦労もしたし頑張ったから、ほめてもらえるのは素直に嬉しいところだ。

 対して若手びいきの職員女性はというと、これ以上ないくらいに「ぐぬぬ……」と悔しがっていましたよ。その様子から、十中八九あちらの採取品はボクたちの物よりも劣っていたと思われる。


 普段からおじさんたちからお小言を言われていたことやボクたちとの勝負だったことを考えると、この森に関しては初心者のボクたちに圧勝できて、しかもほどほどに手を抜いていただろうから、普通の品質の物と高品質な物が半々くらいの割合だったのではないかな。


「まあ、全部ボクの想像ですけど」


 だけど女性のぐぬぬ度合いが増したあたり、当たらずしも遠からずだったような気がする。うーん、分かりやすい。


「で、では採取品は冒険者協会で預からせて――」

「あ、依頼人がいるんだからさっさと納品して依頼料をもらいたいです。レッサーヒュドラや他の魔物と戦って、薬品関係の消耗品類が一気になくなっちゃったんですよねー」


 消耗品類の購入に、あるのかどうか不明だけれどメイションで魔物除けのアイテムを購入する資金だって必要だ。手持ちのお金はいくらあってもいい。

 もっともこれは本音でもあるけれど建前でもある。今回の勝負だけど、依頼としては三日間という期限があった。そして今日一日はまだ期限内となってしまうのだ。下手に冒険者協会に、いや彼女に預けてしまえば、紛失どころか勝負相手のパーティーが納品したものと入れ替わったりしかねない。


 これだけ多くの人が見ている前で取り出して見せたのだから、そんな杜撰(ずさん)で軽率なことはしないと思うかもしれない。が、狂信者に例えられるような熱心な支持者ともなると一般常識や道理が通用しなくなるものなのだ。


 それに今のところは彼女一人だが、他にも若手びいきの職員が冒険者協会に紛れ込んでいるかもしれない。まあ、納品先の『商業組合』にもシンパが潜んでいるかもしれないのだが、おじさんが目を光らせている以上、協会よりは手を出し辛いはずだ。


「そういうことならすぐに金を用意してくるからちょっと待ってな。ああ、他にも採取してきたものがあるなら一緒に買い取るぞ」

「ぜひお願いします。ついでに査定は甘めにしてくれたらもっとありがたいですけど」


 軽口を言い合うボクたちを、女性は怒気を越えて殺意すらこもっていそうな目で睨みつけていた。いやはや、本当に分かりやすい人なことで。


 近々使用するだろう分を除いて採取してきた香辛料を売り払うと、まとまった金額を手にすることができた。俗にいう小金持ちというやつだね。必要なアイテム類をそろえたらすぐに消えてしまう儚い定めだけれど。逆にこれくらいでは足りないという可能性もあったりして。


「そういや、レッサーヒュドラとか魔物の素材も持っているんだよな?」

「まあ、ありますね」


 なんならシャンディラからトライ村に来るまでの間に倒した魔物の素材まである。


「何ならそいつもうちで買い取って――」

「ちょっと待ったあ!採取品については依頼主だしこっちの不手際もあったから見逃したがな。魔物の素材まで一足飛びで話を付けられちゃあ困るぜ」


 おじさんの申し出を、頭部がいくぶんか荒野化した年配の男性がカウンターの向こう側から身を乗り出すようにしてインターセプトする。


「ゲッ!いたのか支部長」

「まったくお前は昔っから油断も隙もないやつだな!」

「いいじゃないか、どうせ最後はうちが買い取ることになるんだからよ」

「こっちの取り分がなくなるのが困ると言っとるんじゃあ!」


 会話の内容はともかく気安そうな間柄ではある、かな。ただ、放っておくと延々やり取りを続けていそうな気配があったので、こちらから打診することに。


「そっちも出しましょうか?」

「お?ああ、頼むぜ」

「買取は協会で!」


 装備の新調もしくは改装も行いたいので売るかどうかはともかくとして、倒した証として見せるつもりではいたので出すことは問題ない。

 鱗に皮、さらにはレアアイテムの毒牙といったレッサーヒュドラシリーズに加えて、ウロコタイルやウォータースライム、ミニスネークと森に出没する魔物の素材をアイテムボックスから取り出す。


「あ、テーブルがいっぱいになっちゃった」

「まだあるのか!?」

「街道沿いの魔物の素材が少々」


 答えると途端に大多数は興味をなくした様子となった。村や町の近くであればどこにでも現れる特段珍しい魔物ではないから仕方がないけれどさ。リアルとは違って、それら魔物素材で地域経済が賄われている訳でもないからねえ。


 迷ったが、これらの素材は全て冒険者協会に買い取ってもらうことにした。なんだかんだで滞在中は一番にお世話になるだろう施設なので、良好な関係となっておくに越したことはないと考えたためだ。支部長が責任者として出てきてくれたこともある。


 というか、今回の件で職員の彼女は責任を取らされる形で裏方へと回されることになっていた。他の若手たちより一足先に罰せられた形だ。


「これに懲りて反省してくれればいいんだがな」


 支部長の呟きがやけに印象的だった。どこの世界でも若者の育成は大変なようです。


「無理を言ってすまなかったなあ。だけど嬢ちゃんたちのおかげで、あいつらに上には上がいるってことを思い知らせてやることができそうだぜ。なに、魔物との戦いで負けていた上に依頼の評価にかかわる採取の品質でも負けてるんだ。文句なんて言わせやしねえさ」


 おじさんの言葉の通り、この一件以降若者たちの横柄だった態度はすっかり鳴りを潜めるようになったのだとか。ちょっと話が出来過ぎの気もするけれど、ゲームの世界なのだしそのくらいはアリかもね。

 と、この時は暢気に考えていたのよねえ……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ