表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第五十章 トライ村では二騒動?

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

839/933

839 採取勝負二日目 その3

 レッサーヒュドラの厄介なところは色々あるけれど、一番は何かと問われたなら高い回復能力を挙げたい。

 もちろん多頭なことや巨体なことも十二分以上の危険性を秘めてはいる。得意とする鋭い牙による噛みつき――状態異常効果付き――は頭の数が増えれた分だけ攻撃回数を増やすことになるし、大質量は単純に存在するだけで脅威となるためだ。


 それでもなお回復能力を推すのは、それを上回る攻撃を常に与え続けなくてはいけないという重圧感や、目の当たりにすることによって発じる徒労感や絶望感が半端ないからだ。

 特に後半がえげつない。例えば、クリティカルヒットによって大ダメージを与えたとしても、時間が経過するだけでそれがなかったことになってしまう。いっそのこと開き直って、地道にちまちまと攻撃を与え続けるとしても、回復能力を超える総量に至らなければ無意味となってしまう。


 心がへし折れるわ。


 さて、対するボクたちの戦力ですが、今のところ最大ダメージをたたき出しているのがネイトの土属性魔法だったりする。補助や回復役が本職な彼女がダメージディーラーになっている時点でお察しといったところ。熟練度は結構上がっているのだけれどね。

 

 接近戦組では唯一ミルファだけが、二刀流による手数の多さで回復力を上回るダメージを与えていた。それでも時折襲い掛かる尻尾攻撃に対処しなくてはいけないため、結果としては互角より少しはマシ程度にまで抑えられてしまっていた。


 残念ながらボクとリーヴはその反対で、わずかばかりに回復能力が上回るところまでしか持ち込めていなかった。そしてエッ君に至ってはほとんど攻撃ができていないくらい追い込まれていた。


 ただし、これはあの子の持ち味を生かすことができなかったことによるものだ。エッ君が得意とするのはその小柄さをも利用して――リーヴもそうなのだけれど、本人は小っちゃいことを気にしているのよね――ちょこまかと縦横無尽に動き回ることで、強引に隙を作ってはそこを突くというものだ。

 だけど今回の場合、多頭を相手取るために動き回れる範囲が制限されてしまった。さらに、大きな体格差によって攻撃が届かなないという悪条件まで追加されてしまう。


 まあ、何が言いたいのかといいますと、ボクの作戦が間違っていた、もしくは完全に裏目に出てしまったという訳です、はい。


 とはいえ、複数の頭を相手取ることができたかと考えると、甘く見積もっても「とてもとても厳しい」ものとなっただろう。


「このままではじり貧ですわよ。リュカリュカ、何か起死回生となる一手を考えてくださいまし!」


 ミルファ、メガネのビタ君のような無茶ぶりをしてくるね……。ボクは某未来からきた耳なしネコ型ロボットじゃないのだから、そうそう都合良く状況を打破できるような便利アイテムなんて持っていない……、あ?


「ダメで元々、効いたらラッキー!これでもくらっちゃえー!」


 相手も焦れてきていたのか、ことさら動きが大きくなった噛みつきを避けてアイテムボックスから取り出したものを投げつける。瓶が割れてその中身が降りかかると「シギャアアアーー!?」とレッサーヒュドラが悲鳴のような叫び声をあげては悶え始めた。

 余談ですが瓶が割れてうんぬんは演出なので、力を込めて投げなくても大丈夫。命中した時点でアイテムの効果は発揮されるようになっていたりします。


「〈鑑定〉。……おおう!完全に思い付きだったけど効いてるみたいだわ」


 ボクが投げつけたアイテム、それは解毒薬だ。レッサーヒュドラの攻撃によって発生する状態異常の中には定番の毒状態もあった。だから「解毒薬でレッサーヒュドラの中にある毒を中和してやれば、逆に調子が悪くなったりするのでは?」と投げつけてみたのだけれど……。


「今なら回復能力が低下してるよ!」


 いやはや、想像を上回る効果を発揮することになったわね。そして当然、このチャンスを無駄にしたりはしない。

 真っ先に動いたのはエッ君だった。解毒薬をぶつけられたことでボクの対峙している首の動きが悪くなったとみるや否や、それを足場にして三角跳びの要領で担当の首めがけて躍りかかったのだ。しかも闘技の【流星脚】を発動させていたあたり、相当なフラストレーションがたまっていたもようです。


 続いてそのタイミングを狙っていたかのようにネイトの【アースドリル】が弧を描くようにして上空から落ちてくると、太い胴体を貫通してその場に縫い留めてしまった。

 え?なにそれ、その小技すごい!後で聞いた話によれば、〈土属性魔法〉の熟練度を上げたことで発生する追加効果らしい。

 ついでに解説しておくと、魔法は対象に向けて直線で進むのがデフォルトなので、弧を描いて落ちてくるというのは地味に制御が難しかったりします。


 胴体が縫い付けられたことでレッサーヒュドラの動きは大きく制限されることになる。それは尻尾の可動範囲にまで影響していた。側面からの奇襲がなくなったことで両脇を担当していた二人が一気に攻勢に出る。


「今ですわ!【マルチアタック】!」


 ミルファが両手の得物でもって華麗に踊るような剣舞で斬撃を連続で放ったかと思えば、リーヴは盾による殴りつけを組み込んだ攻撃で堅実にダメージを蓄積させていった。どちらも割とえぐい。


「〈ピアス〉に〈スラッシュ〉!おかわりの〈スウィング〉!」


 ボクはといえば丁度いい高さに解毒薬をぶつけられてふらつく頭があったので、〈ピアス〉で口から奥へと龍爪剣斧の剣先を差し込んで、〈スラッシュ〉で顔から喉を切り裂き、〈スウィング〉でくるりと回した石突き側でもって顎をかち上げてやった。

 え?ボクの方がよほどえぐい?あれ?


 それはさておき、この一連の流れによって勝敗は決定づけられた。まあ、その後もレッサーヒュドラはしぶとく暴れ回ってくれて、ボクたちの方も小さくない怪我を負うことなったのだけれどね。これでも最強の個体でもなければフィールドボスでもないというのだから、この森ちょっと危険過ぎではないの?

 それでも誰一人欠けることなく抑え込むことができたのだから、突然の遭遇戦となった割には御の字だと言えるのではないかしらね。


 そして、その原因となった連中ですが……。

 どこにも姿が見えなかったりする。かなりのズタボロだったから戦力になったかは正直に言って微妙なラインだったと思う。だから逃げてくれたのは別に構わないのだが、その先で魔物にやられちゃったりはしていないよね?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] >解毒薬でレッサーヒュドラの中にある毒を中和してやれば、逆に調子が悪くなったりするのでは?  おや珍しいタイプ。  大抵は毒袋とか毒耐性とか。 そう言うので体に毒が着かないよう又は着いて…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ