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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第八章 一人目の仲間

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82 宰相と侯爵

あけましておめでとうございます。

本年もよろしくお願いします。


お正月スペシャルとしまして本日は四回、明日の二日から四日までは一日二回更新していきます。

「こんの、バカ娘がー!!」

「痛たたたたたた!!!?お、お父様、痛いですわ!」


 ぐりぐりとミルファシアさんの両こめかみにねじり込まれるウメボシ攻撃……。

 あー、あれは痛いわー。


「あれで場を収めようとは片腹痛いわ!この愚か者!」

「ぐわっはー!?」


 一方で、バルバロイさんは見事なアッパーカットを喰らってお星さまになっていた。


 えー……、いきなりカオスな状況となっていますが、入ってきたナイスミドルなお二人がボクたちに挨拶するのもそこそこに、ミルファシアさんたちを折檻(せっかん)し始めたのだった。


 ミルファシアさんの方は彼女の悲鳴からどうやらお父さんらしい。

 で、バルバロイさんの方はやたらがっしりとした体格の人だったので、お父さんではなく上司の方というところかもしれない。


「うっうっ……。ひどいですわー……」

「ぐふう……」


 そして十分後、制裁を受けたミルファシアさんたちは部屋の隅で正座させられていた。

 あ、バルバロイさんは座る事もできずにぐったりと床にはいつくばっていたのだけどね。エッ君、いくら反応が面白いからといってツンツンするのは止めてあげて。


 一方で、おじさま方といえばまるで何もなかったかのようにボクの目の前でお茶を飲んでいたりしています。

 対比のひどさに思わず冷や汗をかいてしまった。お茶を運んできた侍女さんも、チラリと視線で部屋の隅にいる二人を確認した後は平然と給仕の仕事をされていたし……。


「え、えっとー……」

「うむ。落ち着いたところで改めて挨拶をするとしようか」


 いえ、全っ然落ち着いてはいないんですが!と言えるはずもなく頷くことで続けてもらうことにする。


「クンビーラの宰相を務めているマクスム・ハーレイ・クンビーラだ」


 ウメボシを受けながらミルファさんが「お父様」と言っていたし、この人が公主様の叔父にあたる人なのだろう。


「バスカル・コムステアという。慣れない登城で気が張っていただろうに、愚息が迷惑を掛けてすまなかった」

「いえいえ、そんな!」


 バルバロイさんのお父さんで、クンビーラ家臣の貴族筆頭であるコムステア侯爵にいきなり頭を下げられ大慌てになるボク。


「ともかく頭を上げてください」


 ミルファシアさんがボクを様付けで呼んだことと同様に、地位のある人や立場がある人が簡単に頭を下げるのも問題となる。

 身分制の強い社会だと特にその傾向は強く表れやすいので注意が必要になるのだ。

 そういう社会制度を壊して民主主義を築くんだー!という目的でプレイしている人や、下剋上や成り上がりを目指すという人でないのなら、あまり波風を立てないようにしておく方が無難だと思われます。


 今だって侍女さんという第三者の目があれば、こっそりとこの部屋の様子を探っている人物がいないとは限らないのだ。

 まあ、部屋の隅でミルファシアさんたちが正座をさせられている時点で色々アウトという気がしないでもないけれど……。


 後、おバカ貴族が身分を笠に着て無茶なことをやっている、なんていうテンプレ的な場面に遭遇してしまったなら、ボクだって助けに入るとか、問答無用でぶっ飛ばすなんてこともしちゃいそうだ。

 結局は個々のプレイヤーのロールプレイ次第ということになってしまうのだろう。


「バスカル、ここは彼女の言葉に甘えるとしようではないか」

「はっ」


 困惑するボクの様子を見かねたのか、マクスム宰相が取りなしてくれる。

 その慣れた感じに疑問を持ったのも束の間、公主様がお忍びで『猟犬のあくび亭』を訪れているということを思い出した。きっとその後始末等々で鍛えられてしまったのだろう。


「とりあえず本題を済ませてしまおう。ブラックドラゴン殿との対談の際だが、クンビーラとブラックドラゴンの間を取り持ったということで同席だけはしてもらいたい」

「昨日それらしい話は聞かされましたけど、やっぱりどうにもなりませんか?」

「こればかりはな。ただ、それ以上のことは求めないと約束しよう」


 この辺りが落とし所かな。クンビーラ側の狙いが全て分かった訳じゃないけれど、その日その場所にボクがいるということが、マクスムさんたちにとって重要なのだろう。

 こちらとしても必要以上にクンビーラの内情に首を突っ込むつもりはないので好都合ともいえる。


「分かりました。会談の場に同席させてもらいます。それで、日取りとかはどうなっているんですか?」

「そちらは未定だ。肝心のブラックドラゴン殿が帰られていないのでな。だから戻り次第使いの者を出し日程を調整するつもりだ。恐らくは帰還後数日中ということになるだろう。そなたには申し訳ないが、それまでの間は遠出をせずにすぐに連絡が取れる場所にいてもらいたい」


 まあ、それは仕方がないことだろうね。コクリと頷くことで了承の意を示した。


「旅立つ際にブラックドラゴン殿からの言伝を聞いた者によれば、長くとも一カ月以内に帰ってくると言われたそうだから、近日中には結果が出ると思っている。窮屈な思いをさせてしまうがよろしく頼むぞ」


 ブラックドラゴンと出会った日、つまりボクが『OAW』の世界にやって来てから今日で二十日目。

 彼が里帰りに出発したのがそれから数日後のことだったから、どんなに少なく見積もっても十五日は過ぎているという計算になる。

 つまり、再びクンビーラへと帰ってくるまで最長で十五日あるということだ。


 ただ、この話を聞くことこそ物語が進む鍵になっていた可能性がある。

 明日にも、いや今日の午後に戻って来るということだって考えられるのだ。


「いない者と話し合う事はできませんから、しょうがないですね」


 と、物分かりが良い台詞を口にしたものの……。十五日、半月もの間行動を制限されてしまうというのはやっぱり厳しいなあ。


「ふうむ……。それならば、我らからの依頼を受けてみる気はあるかな?」

「はい?」


 唐突な申し出に思わず間の抜けた声を上げてしまう。

 見ればしてやったりという顔で宰相さんがこちらを見ていた。その表情にどこなく公主様やミルファシアさんとの共通点を見出してしまう。


 何だかんだ言ってこの人もまた、悪戯(いたずら)好きというかそういう面をお持ちなご様子。

 その証拠に、コムステア侯爵が小さくため息を吐きながら首を振っていた。


「受けるかどうかを決める前に、詳しい話を聞かせてもらえませんか」


 どうやら、本当の本題はこれからのようだ。


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