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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第四十八章 二度目のシャンディラにて

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809 またまた絵画鑑賞会

 エルに誘導してもらって、集まっている人たちにバレないようにこっそりと地下へと入る。

 ちなみに、地上の砦跡は遺跡の監視のために整備する予定だったとのことで、今回の件で不自然なく着工ができるようになったそうです。


 細い通路を抜けて、五枚の絵が飾られてある広間に到着。人目もないことだし、気分転換にもなるだろうからうちの子たちも出してあげよう。

 まあ、『ファーム』の中は高級品だったこともあって元より広々としている上に、魔改造がほどこされた結果今では一部の場所に魔物が出現するようになっているはアコの迷宮が存在するはで、窮屈や退屈とはほど遠い仕様になっているのだけれどね。

 要は、ボクがみんなと触れ合いたかったということです。もちろん座敷童ちゃんたちも一緒ですよ。


 エッ君とリーヴを除いた初見組は壁に飾られた絵に圧倒されているようだった。うんうん。色鮮やかなことに加えて縦横ともに数メートルの大きさだからねえ。気持ちはよく分かるよ。

 ……タマちゃんズとか翡翠ひよことかは見向きもせずに走り回っていたけれどね。まあ、あの子たちは愛玩鑑賞枠だし、それが平常運転だから問題なしかな。


「どう?びっくりした?」


 並んでポカーンと口を開けていた人化したトレアと座敷童ちゃん、チビイフリート姿のアコ――お気に入りなのかな?――に話しかけると、コクコクとすごい勢いで首を縦に振っていた。

 せっかくの機会だから、このままあの子たちには絵画鑑賞を楽しんでもらうことにしようか。


 対して、ボクとエッ君とリーヴの二度目組は次の目的地のヒント探しだ。まずはバラバラに散らばってじっくりと五枚の絵を眺めていく。

 先日のバーゴの遺跡とは異なり、この地下遺跡に明かりはなく基本真っ暗だ。ボクが生活魔法の【光源】で生み出した明かりに照らされ、五枚の絵は暗闇から浮かび上がっているようにも見えた。


「改めて見てみると、それも計画のうちだったのかもしれないね」


 他にも顔料の色あせを防ぐ意味合いもあったのだろう。リアルでも美術品などに強い光は厳禁だ。写真撮影可の展示物でも、大抵は「フラッシュの使用はしないでください」といった注意書きがあるものなのだ。

 ゲームだから何とでもできそうなのだけれど、意外にも『OAW』はそういう点をリアル準拠にしてあることが多いのよねえ。


 それはともかくとして、壁の絵についておさらいしていこう。

 まず、一枚目。青い空と小さな白い雲の中『浮遊島』が斜め上からの視点で描かれている。最初は空ではなく海のど真ん中だと勘違いしてしまったのだよね。


 続いて二枚目。今度はふもとから見上げるようにして『風卿エリア』のシンボルでもある『大霊山』がダイナミックに描かれたものだ。実は小さく『浮遊島』らしきものも写り込んでいた。


 そして三枚目。風景画だったものが一変して緋晶玉の採掘現場の絵だ。恐らくはここも、アコがダンジョンコアとなっていた迷宮と同じような場所で、もしかすると反抗的な人々や対立していた人々を強制的に働かせていたのかもしれない。


 さらに四枚目。今度は部屋の中を描いたものだ。中央に置かれた機械、多分緋晶玉から魔力を取り出してエネルギーにする装置の完成を祝うものだろう。大人数人で持ち運べそうなサイズだから試作機だったのかもしれないね。


 最後の五枚目。一枚目とほぼ同じ構図で描かれていたそれは、街の周囲が草原に囲まれているという決定的に異なる部分があった。『浮遊島』になる前の都市を描いたものだったのだろう。


 以上の五点が飾られていた訳なのだけれど……。旅をして回って色々見聞きしたから、あの頃は分からなかったことも気が付けるようになった気がする。

 いやはや、まさかこんなこ所で自分の成長を感じることになるとは思わなかった。


 さて、単純に次の行き先のヒントということであれば、場所がはっきりしている二枚目の『大霊山』となるだろうか。

 一枚目の『浮遊島』に直接行くのが一番かもしれないが、巣くっている死霊たちのこともある。

 数代前のクンビーラ公主様がこの遺跡の奥にある転移魔法陣から『浮遊島』に行った際には、騎士たちのような戦闘が得意な面々が同行していたにもかかわらず、死霊たちと戦うことなく逃げ帰ったらしい。

 あの頃のボクたちはようやくレベルが二桁になったばかりだったから、勝てるはずがないと考えて、逆に死霊どもがやって来ないように件の転移魔法陣を破壊したのだよね。


 あれからレベルだけでなく武器の扱いや魔法の熟練度なども上がって、間違いなく強くなったと言える。とはいえ、何千年も死霊を続けているような文字通り人間をやめた連中と渡り合えるのかと問われると、はっきり「できるもん!」とは答えられない。

 ボクだけならまだしも、全滅するときにはミルファにネイト、そしてうちの子たちも巻き込むことになってしまうからね。仮に行くための手段があったとしても、安易に「突撃だー!」とは言えない訳です。


 残る三から五枚目の絵からは、目的地を考えるのは難しいかな。緋晶玉の鉱山は迷宮を利用していたのだけれど、緋晶玉の算出にリソースの大半を割り振っていたために、通常の迷宮のようなうまみがなくなっていた。アコがいた迷宮がその典型で、外れの迷宮として存在が忘れ去られている可能性が高いのだ。


 四枚目の絵の主役となっている装置は、当時はすごかったのかもしれないが今の方が魔力の抽出技術は高い。よって、歴史的な価値くらいしかないだろう。

 五枚目。今さら『浮遊島』があった場所に行ってもねえ……。そもそも周囲には草原以外何も描かれてはいないので候補を見つけようもない。


「消去法で考えても、『大霊山』が目的地になるかな。山というよりは塔のような形をしているし、実は『浮遊島』に行くためのエレベーターだったりして」


 いくら何でもそんな都合のいい話はないだろうけれど、もしかすると少しくらいは関連があるかもしれない。まずはミルファとネイトに相談かしらね。後は公主様たちやエル、デュランさんたちなどにも話を聞いておきたいところだ。


「あれ?このくらいならアウラロウラさんに「ヒントちょうだい」って言えば教えてくれたかも?」


 ということに気が付いたのは、その日の就寝直前のことだった。


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― 新着の感想 ―
[一言] >他にも顔料の色あせを防ぐ意味合いもあったのだろう。リアルでも美術品などに強い光は厳禁だ  なお現代で使われているカメラのフラッシュはUVフィルターが基本装備であり、絵画等への色あせ効果は…
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