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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第四十七章 バーゴ遺跡その内部へ

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805 スピンオフ作品談義(雑談回)

 プレイヤー同士の交流と商談の聖地といえば『異次元都市メイション』だ。もっとも『OAW』はプレイヤー一人一人にそれぞれの世界がある基本一人用のRPGのため、他のプレイヤーと交流できる場はここしか存在していないのだが。


 さて、商談の場ということはつまり商品となる物が存在するということだ。メイションはクリエイター系のプレイヤーにとってその発表の場でもあった。定番の武器や防具といった装備品に回復アイテムをはじめとした消耗品、さらには日用雑貨や芸術品、果ては用途不明な謎の物体Ⅹに至るまで、ありとあらゆる物が売りに出されていた。


 そんな中、ひときわ異彩ながらも重要視されているのが食べ物、料理類だった。いくらでも食べられていくら食べても大丈夫というVRならではの利点も追い風となって、メイション内にある食堂や酒場、屋台――のほとんど――はいつも大繁盛となっていた。


 南北にある広場をつなぐ三つの大通りのうち、東の道は食堂などが軒を連ねていることから通称『食道楽』と呼ばれている。折々の際にプレイヤーたちの間で行われている人気投票において毎度のごとく上位に食い込む『休肝日』もそんな店の一つだ。


 しかし、そんな一見するとどこにでもある人気料理店にはある特大な秘密が隠されていた。看板娘として人気の給仕NPCキャラのフローラが、神出鬼没で正体不明だと一部に噂されている『情報屋』ことフローレンス・T・オトロその人なのだ。


 そして、今日も今日とてフローレンスはフローラにふんして店内を忙しく駆け回りながら、客たちの話に耳をそばだてていた……。



「あー、つまりなんだ?『テイマーちゃん』のワールドでは空の上に『大陸統一国家』時代の都市がぷかぷか浮かんでて、『テイマーちゃん』たちは何かしらの理由があってそこに繋がる遺跡とかをぶっ壊して回っている、てことか?」


「解禁された情報によると、そういうことらしいな」


「理由とか肝心な部分が伏せられたままだから解禁された気がしねえ……」


「そこはやり過ぎるとネタバレになるからしょうがねえべ」


「ところで『大陸統一国家』といえば『古代魔法文明期』の劣化版だろ。それなのに空に都市を浮かべられる魔法技術があったってことに驚きなんだが?」


「劣化版でそのレベルなら、『古代魔法文明期』はどんだけとんでもない代物だったんだ……」


「そりゃあ、あれだろ。空のさらに上なんだから宇宙にまで進出してて、スペースコロニーとかもばんばん建造してたんだろ」


「ついには地上側と宇宙側とで敵対するようになって、大戦争が起きるんですね。分かります」


「某SFロボットアニメかよ。仮面の人は必須だな」


「というか、一般人のはずの主人公が新型兵器のある場所に偶然居合わせるとか、よくよく考えたらあり得ない展開だよな」


「そうだな。でもそれ以上は危険だから突っ込むのは止めような」


「話を戻すぞ。『テイマーちゃん』が空に浮かぶ都市への通行を阻む理由って何だと思う?」


「んー……。傑作アニメ映画をパクリ、もといリスペクトするなら、超兵器が眠ってるってパターンかなあ。三つの大国はもとより、『風卿エリア』の小国でも大陸の覇権を取れるようなものだったとか」


「なるほど。実は色々詳しかったみたいだし、今回『テイマーちゃん』が倒したキューズってやつは某大佐の立ち位置だったのか」


「あっちと違って、遺跡の中のことには詳しくなかったみたいだけどな」


「まあ、魔法の流れ弾というか戦闘の余波で制御室をぶっ壊すようなやつだし」


「もしもあいつが空飛ぶ都市にたどり着けたとしても、うっかり例の崩壊の呪文を唱えて台無しにしそうな気がするぜ」


「いや、さすがにそこまでの馬鹿じゃないだろ。フローラちゃんもそう思うだろ?」


「いきなり話を振らないでください。私がNPCの高性能AIでなければ意味が分からずに困惑していたところですよ」



 などと返しながらも、客たちとの情報収集(ざつだん)に興じるフローレンスなのだった。

 そしてまた別の日。



「まさか、いきなり学園ものにジャンル変更してくるとは予想外だったなあ」


「いやあ、あれは学園ものっていうよりは乙女ゲーム?」


「から派生した悪役令嬢ものに近いと思うわ」


「え?でもヒロインにざまあしてないぞ?」


「あれはヒロインが超絶にお花畑なお(つむ)の持ち主か、それともゲームの世界だから何をやっても許されると勘違いしたおバカ転生者の場合よ」


「最近はヒロインと仲良くなったり仲間に引き込んだり百合な関係になったりする作品も多いよ」


「そ、そうなのか……。奥が深いんだな」


「王道展開は根強い人気があるけど、それだけじゃ満足できないっていう層はどこにでも一定数はいるからね。それに別ジャンルが好きな人を呼び込むきっかけにもなるし」


「別ジャンル?」


「さっきの話で例えるなら百合系のお話が好きな人ね。乙女ゲームを下敷きにしているから悪役令嬢ものって基本的にヒロインのスペックも高いのよ」


「その中に顔面偏差値も含まれるってことか」


「ついでに聖女候補とか特殊魔法の属性持ちだとか平民出身とかの設定もちなことが多いから、人に寄り添える優しい性格な場合が多いわ」


「え?なにそれ、俺もそんな彼女が欲しい……」


「そういうことはせめて攻略対象になれるくらい自分磨きをしてから言いなさい」


「ゲフッ!?」


「うーん。現実は厳しい!」


「こいつのことはともかくとして、あのポートル学園の話をスピンオフ作品として公開するかもしれないって噂があるらしいわ」


「うひゃあ。『テイマーちゃん』効果はすごいわねえ。で、どんな話になりそうなの?」


「ベタに乙女ゲームちっくな異世界恋愛シミュレーションものっていうのが大方の予想ね。それとあくまでも噂だけど、選べるキャラが複数いるんだって」


「複数?乙女ゲーム主人公と悪役令嬢ポジのダブルヒロインってこと?」


「あとは『テイマーちゃん』の役どころね」


「え?あれってヒロインの立ち位置じゃないのか?」


「違うわよ。『冒険日記』で『テイマーちゃん』本人も否定していたじゃない。あれは攻略対象の個別ルートに入ってから登場するライバルキャラね」


「『テイマーちゃん』と同じく物語中盤からの途中参加になるのか、それとも冒頭部分からスタートできるのかで大きく話が変わってきそう」


「やるかどうかはともかくとして、楽しみは増えたわね」



 関連する世界が広がればその分新規顧客を獲得しやすくなる。運営にはぜひとも頑張ってほしいと心の中で思うフローレンスなのだった。


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[一言] >「こいつのことはともかくとして、あのポートル学園の話をスピンオフ作品として公開するかもしれないって噂があるらしいわ」  これもう、シナリオ原案とかそんな扱いで、リュカリュカにロイヤリティ…
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