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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第四十七章 バーゴ遺跡その内部へ

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792 ヴィー・ウン! ヴィー・ウン!

『繰り返す。制御室に深刻なダメージの発生を確認。このままではシステムに重大な欠陥が生じる可能性アリ。至急、保安要員と補修要員の派遣を申請する』


 サイレン音と共に無機質な音声が流れ始めたのはそんな時だった。それまで沈黙を保っていた巨大ディスプレイにも同じ文章が表示されている。


「保安要員に補修要員の要請ですか。リュカリュカが予想した通り、この遺跡には本当に戦力が存在していなかったのですね」

「もしかすると、この遺跡に常駐していたのは機能が正常に動いているのかを確認する者たちだけだったのかもしれませんわね」


 最低限の人員で、しかも役割には直接触れることのない者たちだけで回していたということ?

 ……機械による自動化がかなり進んでいたようだし、決して不可能ではなかったような気はする。


「いやいや!のんびりしてる場合じゃねえだろ!?」

「早く逃げないとヤバいんじゃないのか!?」


 考察と言えるほどたいしたことではないが、音声や表示された文章を読み解いていたボクたちパーティーに対して、地元組のビンスとベンは慌てふためいていた。


「落ち着きなさいって。バーゴの街にはここ以外に遺跡なんてないんだから、要請を出したところで無駄になるだけでしょ」

「あ……、それもそうか」


 これは別に彼らを落ち着かせるための方便という訳ではない。ミルファたちに調べてもらった正規の入り口である転移魔法陣は、対応先が不明のため使用できないと警告が出ていたという。

 つまりここに繋がっていた場所は、現在では存在していない確率が高いのだ。


 まあ、地中に埋まっているのでこれまで知られていなかっただとか、レオ領など他の貴族の領地にある遺跡へと要請を出したとか、かもしれない事柄ならばいくらでも論じられるから油断はできないけれどね。


 と、心構えはしていたつもりなのだけれどねえ……。

 遺跡の制御こんぴーたカッコカリのやらかしはその斜め上をいっていた。


『申請に対する本部等からの応答なし。よってこれより本制御システムを最上級決定者とする独裁モードへと移行する』

「独裁モード!?」


 とっても不穏当な名前のモードが発動しちゃった!?


『制御室が攻撃を受けている件を最重要緊急対処項目に設定、敵性体排除のため保安要員として活動可能な存在の強制召還を開始』

「おいおい、何かやべーこと言ってねえか、こいつ!?」

「……正解。これだから勘のいい人は嫌いなんだよ」

「ええー……。なんで俺正解したのに怒られてるんだ……」


 それはね、その予想を口にしちゃったことでフラグが立ったかもしれないからさ!


『……該当物なし。召喚対象の適正条件を緩和。再検索を開始』


 が、今回はどうやら不発だったらしい。

 とはいえ即座に検索を再開したようだし、身構えて緊張している体を解きほぐす暇はないのかもしれない。


 そして緩和された条件とは一体どんなものなのだろう?

 強さに関するものならばこちらにとっては好都合なのだが、敵性体排除を目的としているようだから、そんなうまい話はないと思われる。

 どうにも機械的な調子なので、最初はこんぴーたを絶対者として付き従うことを組み込んでいたのかもしれない。


 そうなるとあちらの言うことをきかずに暴走することも……?

 あ、ダメだ。その場合でも侵入者側はあっけなく鎧袖一触でやられてしまうのがお決まりのパターンだったわ。むしろ命令に従うようなケースの方が真の実力(ほんき)を出せずに接戦になったりするのよね。

 はあ……。いずれにしても面倒な輩が出てくることだけは間違いなさそう。


『準適合体を発見。これより召還を開始する』

「なあ、邪魔したりできないのか?」


 ででーん。ベン君、アウト。無粋な真似は尻バットの刑に処されますよ。

 登場シーンに変身時、さらには名乗りや口上の際には生温かい目で見守ってあげるのがお約束というやつなのだ。


「やめておけ。召喚には膨大な魔力が必要となるからな。手を出してせいで使用されるはずの魔力が暴走でもしたら、我らの方がこの遺跡ごと消し飛ぶことになるぞ」

「エッ君、ステイ!」


 ちょっ!?演出の都合にそんなガチの理由を設定しないでくれませんかねえ!?

 水龍さんの忠告に、今にも飛び出していきそうだったエッ君を慌てて引き留める羽目になったのだった。


「戦闘になるのを前提に陣を組むから、ビンスとベンは入り口ギリギリまで下がって。水龍さんは二人を守ってあげて」

「む?我は戦いに参加せずともよいのか」

「一応聞くけど、ボクたちを巻き込まずに出現してくる相手だけを倒すことはできる?あ、この部屋へのダメージは問題ないよ」

「……無理だな。恐らくはこの部屋全体が水没することになるだろう」

「さすがにそれは許容できないから、後ろで二人を守っていてください。まあ、どうしてもという場合はお願いすることになるかもしれないけど」


 もっとも、そうなった時点でこちらの負けが決定したということになるのだが。なぜなら、威力と規模が大き過ぎて敵だけではなくボクたち味方にまで被害が及んでしまうためだ。

 起死回生のためのではなく、死なばもろともの一撃という訳です。これもある意味背水の陣と言えるのかしらね?水龍さんだけに。


 牙龍槌杖から龍爪剣斧へと得物を持ち替える。鉄壁の存在がいるとはいえ守護対象がいることに違いはない。

 下手にそちらへと意識が向けられることがないように、近接メインで動くべきだと考えたのだ。仲間たちも次々と武具を取り出し戦いの準備は整いつつあった。


 しかし現れてすぐに戦闘になるとは限らないので、ネイトの〔強化魔法〕によるバフは一旦お預けだ。

 もちろん、話し合いだけで解決するなんてお花畑な思考をしている訳ではない。この手の魔法の定番として有効時間が定められていることが多いのだが、『OAW』でもそれは導入されていた。

 よって、早くから使用していると無駄になってしまうこともあり得たのだ。戦闘の駆け引きは既に始まっているのですよ。


 そしてついに、ボクたちと敵対するだろう存在が姿を現す。


「ぐ、ぬ……。ここは一体?……強制的な転移だと?やはり古代の技術は計り知れん」


 困惑しつつも微妙に嬉しそうな声音で呟いたのは、『大陸統一国家』関連の場所ではすっかりお馴染みとなってしまったローブの人物だった。

 いや、まあ、まず間違いなくポートル学園で実践魔法の教鞭をとっていて、数日前からその行方をくらませていたキューズその人なのですけれどね。


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― 新着の感想 ―
[一言] >敵性体排除のため保安要員として活動可能な存在の強制召還を開始 >召喚対象の適正条件を緩和 >『準適合体を発見。これより召還を開始する』  召喚……召して喚ぶで、呼び出す  召還……召し…
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