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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第四十七章 バーゴ遺跡その内部へ

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776 質疑応答で情報共有

 筋書きはこうだ。

 年齢が近いこともあって、ボクたちとビンスとベンの二人組はお互いの自慢話を始めてしまう。

 それがヒートアップした結果、それならば論より証拠ということで実際に二人が潜水する様子を見せることになる。ちなみに、今の段階がココね。


 しかし潜って見せたのはいいが、「そのくらいボクたちだってできるもん!」と駄々っ子が文句をつけてしまい、「それならやってみろ」「いいよ、やってあげる」と売り言葉に買い言葉の末に、翌日五人で潜水勝負をすることになってしまうのだった。


 要するに、余所者のボクたちが湖に潜っても怪しまれないための理由付けという訳だ。


 そしてビンスとベンは潜った際に隠し通路の入り口の場所と状態をチェックして、ボクたちもいわゆる箱眼鏡でそれを確認するという重要任務を並行して行う手はずとなっていた。


「リュカリュカさん、すげえな。本気で我儘娘がかんしゃくを起こしたみたいだったぜ」

「褒めてくれてるのは分かるんだけど、あんまり嬉しくない」


 すっかり仲違いして険悪になってしまったロールプレイもさることながら、ビンスが言った内容が内容だけに憮然(ぶぜん)とした声で返してしまう。

 しかし、作戦を考えたのはボク自身だから誰かに文句を言うこともできない。計画が上手くいっている証拠だ、と言い聞かせることで釈然としない思いを押し流すのだった。


「という訳でそれっぽい演技は続けたまま、情報の最終確認と共有をしておこうか」

「な、何気に難しいことを要求してくるな……」

「リュカリュカの無茶振りはいつものことですわ。まあ、明日までのことですから諦めてくださいまし」


 などと言いながらも、ベンもミルファも互いにそっぽを向き合ったままなのだから器用なものだと思うよ。


「まずは目標の隠し通路入り口だけど、ビンスとベンが水中で腕を伸ばした先にあるのでいいんだよね?」

「ああ。離れていると分かり辛いんだが、あそこに斜め右に向かう横穴があるんだ」


 真っ直ぐ奥ではなく斜めに伸びる通路を作ることで、目の錯覚的なものを利用しているのかもしれない。もしくは認識阻害の魔法がかけられている、なんてことも考えられるかしらん。

 ふぁんたじーな世界だし、何より昔の文明は現代よりもはるかに技術が進んでいた、という設定を免罪符にある意味何でもアリな感じになっているからねえ。


「じゃあ、次。遺跡近くに湖の魔物が入り込んでくる危険は本当にないの?陸の上、空気がある所なら波の魔物になら簡単に負けるつもりはないけど、さすがに水の中だとそうはいかないから」


 動きが相当制限されてしまうことは簡単に想像ができてしまう。万全を期すということであれば水中での戦闘訓練もあらかじめ行っておくべきなのかもしれないが、そんな時間はありませんのことよ。

 もしもエンカウントしてしまったなら、逃げに徹することになってしまうだろう。


「港に魔物が迷い込んでくるなんて話は十年に一回あるかないかだからな。何の問題もないぜ」

「ただ、俺たちが漁場にするまでは兄貴たちもあんまりこのあたりには近づかなかったからなあ。人間慣れしていない魚たちが逆に近寄ってくるかもしれない」


 かえって妙なフラグを立ててしまったような気がしないでもないけれど、考え過ぎると本格的にドツボにはまってしまいそうなので次の話題に進もうと思う。


「それと、水の流れは大丈夫?本格的な泳法を習得していないボクたちでも、二人についていけるかな?」

「浮き輪に捕まって浮かんでいるだけならともかく、泳いでいて流されるほどの急流はねえよ」


 この地がウィスシー有数の港町として栄えたのも、水の流れが特に穏やかな場所だったからなのだとか。ちなみに流れ込む川も流れ出す川もないのに水量が一定なのは、ウィスシーの底に水が湧きだしているポイントがあるからだ、と考えられているらしい。


「明日の本番の時には俺が縄を持って先行するから、それをつかんで離さない限りはぐれることはないさ」

「最後尾には俺がつくから、たとえ息が続かなくなって縄から手を離したとしてしても、水面までのフォローはできると思う」


 ベンに続いてビンスが対策を考えてあると説明してくれる。


「了解。それじゃあ、最後の質問。遺跡の中の空気がある場所に到着するまで、おおよそでどのくらいの時間がかかる?」

「あー……、ちゃんと測ったことがないからなあ……」

「それでもいいよ」

「……はっきりしたことは言えないが、急いでも入口から一分以上はかかると思う」


 ここは最低でも倍の二分は必要だと想定しておく方が無難かな。たかだか二分の百二十秒だと思うかもしれないけれど、いくら望んでも呼吸をすることができないという圧迫感はいとも簡単に精神を追い詰めてしまうものだ。

 いざという時にパニックにならないよう、心構えをしておく必要があるかもしれない。


 幸いにもレベルアップに伴う能力値の上昇の恩恵で、息を止めていられる時間はリアルよりも長くなっている。何度か潜って体を水の中に慣らしさえすればクリアすることはできると思う。


 ただし隠し通路を進む以前に、入口のある水面から数メートル下まで潜水しなくてはいけない。

 これが意外と難題なのよね。人間の体というものは基本的には水に浮かぶようにできている。うん、疑問を呈したい気持ちも反論したい気持ちも理解できるから、とりあえず今はそういうものだと認識しておいてください。


 しかも長時間の活動を行うためにたっぷりと空気を取り込んでいるというオマケつき。これは要するに、浮袋を抱えたまま水の中へと飛び込んでいるようなものだ。

 思うように体が動かないことで焦ってしまい、余計な体力と酸素を消費してしまうかもしれない。


「すぐに遺跡の中へは進まずに、入口まで潜ることを何度か繰り返して、体を慣らす方が無難かな?」


 それらの点を踏まえてビンスとベンに尋ねてみる。水の中でのあれやこれやに関しては、彼らの方が知識も経験も豊富だからね。


「まあ、余裕があるなら練習した方がいいのは当然だな」


 この場合の余裕というのは時間的なものだけではなく、ボクたちの体力や精神力のことでもあるのだろう。

 くっ……。こうなると魔物なり魚なりの邪魔が入ってしまいそうなフラグが立ちそうになっていることが悔やまれるよ……。


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― 新着の感想 ―
[一言] >ふぁんたじーな世界だし、何より昔の文明は現代よりもはるかに技術が進んでいた、という設定を免罪符にある意味何でもアリな感じになっているからねえ。  そう。 だから魔導鎧とか言って、巨大ロボ…
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