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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第四十六章 港町と遺跡と

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768 白状するよろし

「……聞き出すのかい?」

「気は進まねえが、他所から面倒事が持ち込まれていたら厄介だ。あいつらは孤児院の出身だし、下手すりゃそっちにまで飛び火しかねん」


 ここで少し追加の説明を。やんちゃな若者たちを雇っていることからも分かるように、ゴーストシップサルベージ社は社会からはみ出しかけた人たちのセーフティーネットとしての役割を担っていた。

 まあ、これは湖や港を仕事の場としている人たちに大なり小なり共通していることなのだけれど、話が別方面へと進んでしまうので詳しくは割愛します。


 そんなセーフティーネットな役割の一つに、孤児院への協力があった。寄付や慰問に始まり子どもたちが作った物品を購入してあげたり、出身者を雇ったりとその内容は多岐に渡る。

 何を隠そう社長室の扉につけられたあのプレートも、孤児院の子どもたちのお手製の物らしい。道理で場違いなほどにファンシーだったはずだ。さらにあの二人も孤児院出身の社員だったという訳だ。


 それにしても、こんな内輪のことをボクたちのいる前で話してしまっていいのかしらね?

 ……ああ、こちらが彼らを巻き込む気だったように、あちらもこの一件にボクたちを巻き込むつもりなのか。そういうつもりなのであれば、積極的に関わってしまってもいいかしらね。


「もし良ければ、彼らへの質問役をボクに任せてもらえませんか?」

「うん?嬢ちゃんにか?」

「秘密にしているってことはそれなりに理由があってのことでしょう。これからも一緒にいることになる社長たちが問い質すのは避けた方が無難かな、と」


 災いの芽になるとまでは言わないが、不審がられていたというしこり(・・・)になって残ることは十分にあり得るだろう。


「その点ボクたちは旅の途中の冒険者ですから、後腐れなくざっくりがっつりしっかり尋ねることができるってもんです」


 ドヤッ!と胸を張りながら後を続ける。穴だらけで屁理屈以外のなにものでもない理論だけれど、彼らを矢面に立たせるよりは角が立つことはないだろう。

 キューズと相対する前に不確定要素はなるべく消しておきたい。ここは無理矢理にでも主導権を握らせてもらいます。


「さあ、キリキリと洗いざらい知っていることを吐いてもらいましょうか」


 そして半信半疑でしぶしぶながらもヴェンジ社長たちから質問役を獲得したボクは、社長室へとやって来たビンスとベンの二人に向かって初手からそう言い切ったのだった。


「……嬢ちゃんに任せたのはとんでもない大失敗だったような気がしてきたぜ」

「奇遇だね、大将。私も今まさにそう思っていたところよ……」


 背後で何やらぼやいている人たちがいるようだけれど気にしません!

 と言ってもこれはいきなり難題をぶつけることで相手の出鼻をくじくこと、さらにはこちらのペースに引きずり込むのが真の目的だったりする。

 まあ、多少は「素直に従ってくれるのであれば楽でいいよね」という下心もあったりするのだけれど。


 リアルでは詐欺といった犯罪グループの常とう手段の一つとして使用されることが多いやり口でもあるね。

 いきなり暴力行為をちらつかせてみたり、高圧的で侮辱的な言葉を連発したりするようなやからには特に注意が必要だ。身の危険を感じたらすぐに国家権力に助けを求めましょう。

 最悪、そうしたそぶりを見せるだけでも相手の勢いを削ぐことはできるので、頭の片隅にでも置いておいてね。リュカリュカお姉さんとの約束だぞ!


 もっとも、ボクこそが今現在そのやり口を利用しようとしている訳ですが。


「今すぐ話してくれるなら、これまで秘密にしていたことは不問にしてあげるよ」


 まるで譲歩しているかのような物言いだが、そもそも彼らを罪に問える資格など持ってはいない。つまりはこれもまたハッタリなのだけれど、後ろめたい気持ちを抱えている人には意外と効いてしまう文句なのよねえ。

 そしてこの二人もこれに当てはまりかけていた。


「…………」

「…………」


 残念ながら口を割るほど心を動かすことはできなかったようだけれど。


「あーあ。これだけはやりたくなかったんだけどなー。仕方ないなー」


 わざとらしい口調で言うとビンスとベンは途端に顔をしかめ、ヴェンジ社長とカーシーさんは頬を引きつらせることになったのだった。

 ……確かに悪党ムーブなロールプレイをしていたが、そこまで怯えられるというのはちょっと心外ですね。彼らの中でボクはいったいどれほどの極悪人となっているのか、聞いてみたいような、でもやっぱり聞くのが怖いような。


 ちなみに、これだけはやりたくないというのは心の底からの本音だったりします。その理由は失敗した際のボクへの心理的なダメージが極大だから。

 何をやらかそうとしているのか?

 ……うん。見ていればね、分かるよ。


「ぶっちゃけ、君たちが秘密にしていることが何なのか、大体のところは分かっているんだよね」


 不敵に笑いながらそう言うと、「え?」という驚きの声が四つ重なる。

 ……おい、どうして社長とカーシーさんまでビックリしているのよ。挙動不審になった前後のことを考えれば、遺跡がかかわっていることくらい一目瞭然でしょうが!

 突っ込みたい!ものすごく突っ込みたいけれど、それをやってしまうと話がグダグダになりそうなので頑張って耐えます。


「ズバリ遺跡のことで、そうねえ……。水中にある遺跡内部へと続く隠し通路を偶然発見してしまった、というあたりかしら」

「な、何でそれを!?」

「誰にも言ってないのに!?」

「言ったでしょう、「分かっている」って」


 悲鳴じみた二人の言葉にかぶせるように、お前たちのことなどお見通しなのだとニヤリと笑いながら告げる。


 が、内心はというと……。

 良かった!当たっていて本当に良かった!と安堵の息を盛大に吐いていたのだった。


 だって、ここまで知ったかぶりをして実は全然違いました、なんてことになったら恥ずかし過ぎて恥ずか死してしまうところだよ。


 さて、秘密にしていた内容が分かったところで、次に疑問として浮かび上がってくるのが秘密にしていた理由だ。

 話すことをためらうものだったか、もしくは話すほどのことではないと判断したのか、この二つが予想として挙げられるかしら。


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