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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第四十五章 混迷する学園

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757 タマちゃんズ無双

 悩んだけれど、遺跡のことをジーナちゃんたちに尋ねるのは最後の手段にすることにした。


 理由はいくつかあるけれど、浮遊島についてできる限り秘密にしておきたかったのが一点目だ。

 クンビーラ近くの地下遺跡、この噂だけでも『三国戦争』勃発の引き金の一つになってしまったくらいだ。『大陸統一国家』時代に作られた施設にアクセスできるかもしれないとなれば、確実に大陸全土を巻き込んだ争いの火種となってしまうことだろう。


 まあ、そんな未だ稼働中の生きた施設に巣食っている連中は、強すぎる野望を捨てきれずにもれなく死霊と化しているらしいのだけれどさ。

 何とも皮肉が効きすぎている話だわね。


 二点目の理由は、このままだと本格的に『水卿公国アキューエリオス』に取り込まれかねない危険性が高まっているためだ。

 ジャグ公子は言うまでもないが、トウィン兄さまやローガーたちトリオも将来の国の重鎮だ。このままお付き合いが続いていけばライレンティアちゃんやジーナちゃんたちもまた彼らを支え、時に並び立つ立場となるだろう。


 そうなれば必然的に彼らの近くに居る者たちも、協力者や部下や配下として組み込まれていくことになる。能力があって使える人間であればなおさらだ。


 ストレイキャッツの無力化と捕獲方法を始め、はからずしもボクは自らの有用性を見せつけることになっていた。

 借りを作ってしまったが最後、それを手がかり足掛かりにして囲い込んでくる可能性が高い。

 仮にジャグ公子たち若者世代にはできなくても、酸いも甘いも経験しており清濁併せ呑むことをしてきただろう大公様たちなら、国の益になると判断すれば躊躇(ちゅうちょ)なくやってのけるだろう。


 そして以上のことから、誰も手が出せないように浮遊島をいい感じに何とかする、というボクの目的が知られてしまうと、考えを改めさせようと妨害を受けることになるかもしれない。

 男どもはともかく、せっかく仲良くなったライレンティアちゃんやジーナちゃんと険悪にはなりたくない。大公様たちからも色々と便宜を図ってもらったしね。

 その分内輪の騒ぎには巻き込まれた気もするけれど……。


 そんな訳でヒントを求めて図書館へゴーです。捜索範囲は地理に歴史、後は旅行記や紀行文といった辺りだろうか。


「……なるほど。既に先手を打たれていたってことね」


 図書館へと繋がる渡り廊下で、不意に第六感的な何かにささやかれて〔警戒〕技能を使用してみたところ、複数人が息を潜めているのを感知できた。

 余談だけど、この第六感的なものにはゲームによるアシストの場合と、プレイヤー本人由来のものの二種類があるそうな。ソース提供者はみんなのアイドルにゃんこさん――そう言えと言われました――ことアウラロウラさんなので間違いないです。


 奇しくも先日、算術の教官の手引きによって襲われた時と似通った配置となっていた。

 まあ、裏でキューズが入れ知恵をしていたのだろうとは思っていたので、配置などの詳しいことを知っていたとしても不思議ではないか。


「それにしてもタイミングが良過ぎないかな。情報が漏れていた?内通者でもいたのかしら?それとも偶然?」


 実はキューズの部屋から離れたことで危険はないとされたのか、監視を兼ねた護衛役の兵士はいなくなっていたのだ。

 彼らにとって最重要護衛対象である公子様とそのお友だちが職員寮にあるキューズの部屋の方で捜索を続けていたから、特に不審に感じたりはしなかったのだけれど甘かったかもね。

 タカ派高位貴族の学園生たちのことが片付いたことで、少し気が緩んでいたのかもしれない。


 失敗した作戦を流用しているのも気になる。何か勝利を確信できるような秘策を仕込んでいるのだろうか?

 ただ、襲撃者全員を返り討ちにした挙句、アコの迷宮へと強制的にご招待していたから、失敗の原因が分からなかっただけとも考えられるのよね。

 どちらにしても後始末という面倒事が付いて回ることになるので、時間稼ぎと割り切っていたのかもしれない。


 ついでに「お前のことは何でも知っているぞ」的な無言のプレッシャーや嫌がらせにもなるしね。

 キューズがこれまでに出会ったローブの人物たちと近しい存在ならば、それくらい性格がねじ曲がっていたとしても不思議はないもの。


 問題なのは本当に内通者がいた場合だ。ぶっちゃけ、ポートル学園でこれだけ好き勝手にできたのは、ボクという異端者を投入することで学園内の不穏分子などをあぶり出させる、という大公様たちの思惑と合致したからこそなのだ。

 極端な話、ボクを排除しようとするということは、大公様たち国の上層部の近くに彼らの考えをよく思わない者がいるということになる。

 まあ、実際は現体制への不満がある連中から、単にボクの存在を疎ましく思っているやつまで、かなりの温度差があるだろうけれど。


 あー、なんだか考えるのが面倒になってきた。

 とりあえず無力化して(とっちめて)後のことはいつものごとくジェミニ侯爵たちに丸投げしてしまいましょう!


「学園に侵入してきて物陰に潜むなんて怪しさ全開の行動をとっているのだから遠慮なんていらないよね」


 語尾に音符マークが付きそうな調子で告げるも、隠れている連中が動く気配はない。

 忠告はしたからね。従わなかったのも耳を貸さなかったのも彼らの意思ということになる。ならばその責任はしっかりと本人たちに取ってもらうことにしよう。


「さあ、みんな出番だよ!」


 今回もまた〔共闘〕まで使用したフルメンバーの登場だ。


「なー、みゃー、にー」


 あ、あれ?タマちゃんズまで出てきちゃったの!?

 危ないよとたしなめようとする間もなく、子猫たちは方々へとダッシュを始めてしまう。そして……。


「ひいいいいいぃぃぃぃやああああああああああああ!!!!」

「す、すとれいきゃっつぉぉぉぉおおおお!?!?」


 魂削るかのような悲鳴があちこちから上がることに。後に判明することだが、潜んでいた内の一人は先日講堂でボクにぶっ飛ばされたやつだった。

 しかもサジタリウス伯爵の命令で学園生に成りすましてポートル学園内で得た情報を流していたのだそうだ。


 彼の素性はともかく、ダウンはしていてもあの場にいたことでこちらがストレイキャッツを確保していると思い込んでいたらしい。

 そういえば彼らの心をへし折るために「移送先でストレイキャッツがけしかけられるかもね」的なことを言ったような気がする。

 ただの脅しだったというのが本当のところなのだけれど、知らなければとんでもない恐怖だったのかもね。


 結局、蓋を開けてみれば他の子たちが不完全燃焼で不機嫌になってしまうくらい、タマちゃんズが無双する展開となってしまったのだった。


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― 新着の感想 ―
[一言] >ボクは自らの有用性を見せつけることになっていた。 >貸しを作ってしまったが最後、それを手がかり足掛かりにして囲い込んでくる可能性が高い。  ……なんだろうね。  前に言われた、リュカリ…
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