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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第四十五章 混迷する学園

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756 ネタばらしは悪役の美学ではないのか!?

 隠し棚に置かれていたキューズの研究ノートには、主に『大陸統一国家』時代に築かれたとされる都市についての調査がまとめられていた。

 二伯爵が主張している例の遺跡だろうと思われる記述もあった。やはり彼らとキューズは繋がっていると見るべきだね。


 ただ、調査の結果や考察の全てを開示していた訳ではなかったようだ。

 例えば引きこもりーズの配下が首都中にバラまいたビラに書かれていた『都がサジタリウス領とスコルピオス領にまたがる場所に存在していた』という文言だけれど、キューズの研究ノートによれば『水卿エリア』中央に居座っている広大な湖、ウィスシーの周辺各地に同等の代物が点在しているのだとか。


 つまりは、情報を操作することで意図的に思考を誘導している可能性があるのだ。

 どうしてそんなことをしたのだろうか?決まっている。人々の耳目をそちらへと向けさせるためだ。


「そうして自分は騒ぎに乗じて、本来の目的地に密かに移動しようという魂胆かしらね」


 ふう。下調べをすることにして正解だったよ。二伯爵と合流しているのではないかと考えていたから、危うく偽の誘導に引っ掛かってしまうところだった。

 こうなると繋がって、というよりは利用していたという方が妥当な気がする。そういえば他所で鉢合わせたローブの人物たちも、バカ王子とかアホ領主とかを利用していた。

 うーむ、思わぬところで思わぬ共通点が発覚してしまったわね。


 しかし悪質なトラップは回避できたけれど、まだキューズの目的地が判明した訳ではない。

 やつに追いつきその野望――こちらも現在調査中です――を阻止するためにも、研究ノートを読み進めていくことにしましょうか。


 大昔に都市があったことを証明する跡がウィスシー周辺に点在していることから、キューズは沿岸部に都市群(メガロポリス)が乱立していたと考えたようだ。

 しかも現代と同じくかそれ以上にウィスシーを利用して密接な関係だったと仮説を立てていた。

 ……うん。何と言うかこう、魔物臓器をサンプルとして並べているマッドの割にはまともで真面目な研究だったので、ちょっとばかり拍子抜けしております。


 それはさておき『大陸統一国家』当時の技術力であれば、湖の(ヌシ)を大人しくさせることくらいは訳もなかっただろうから、ウィスシーの湖上交通は比べ物にならないくらい安全で活発だったとしても不思議はない。

 それどころか船を使わなくてもいいように都市間を巨大な橋で繋いでいたかもしれない。


 まあ、そこまでいっちゃうと都市群ではなく一つの超巨大都市になりそうだけれど。


 おや?

 今何か微妙に引っ掛かるというか気になったことがあったような……?


 うにゅにゅにゅにゅ……。

 お、思い出せない!?


 多分『大陸統一国家』関連だと思うから、浮遊島にかかわることだとは思うのですが……。特に背筋がゾワゾワしたり肌が泡立ったりすることはないから、差し当たって緊急性も危険性はなさそうなのでいったん放置かしら。


 ああ、そうか!

 キューズの狙いは浮遊島に行って古代の英知を手にすることなのかもしれないね!都市群なんてものがあったのならば、その近くに浮遊島へと通じる転移装置があったとしてもおかしくはないもの。


 問題は転移装置が一体どこに設置されているのか?ということだ。

 小国であればそのまますっぽりと国土全てが入ってしまうほどにウィスシーは広い。その沿岸部だけでもとんでもない面積になってしまう。

 余裕があるなら観光がてらしらみつぶしに探して回るという方法もあったのだろうけれど、残念ながら現状そんな暇はない。

 恐らくは今頃キューズもその場所に向かっていると思われるしね。


 浮遊島には死霊と化した当時の者たちが巣食っているらしいので、物語の悪役よろしく制御できない連中にサクッとやられてしまう可能性もなくはない。

 だけど、未だボクたちが知らない裏設定などによって、万が一にでも彼が浮遊島を支配するなんてことになったら目も当てられない。


 さらに言えば、後々同じことを考えるやからが現れるかもしれない。ここはキューズが到着するよりも先に転移装置を発見して、使用不可能となるまでしっかりと破壊しつくしておくのが正解だろう。


 しかし、改めて隅々までチェックしてみたのだが、転移装置の在りかはおろかヒントになりそうな文言すら発見することはできなかったのだった。


「まったく!どうせ研究ノートを作るんなら推理物の二時間ドラマで海沿いの崖の上に追い詰められた犯人よろしく、秘密から何から全てを暴露する勢いで記載しておいてくれればよかったのに!」


 肝心なところは伏せながら情報を小出しにするようになっているのだから性質が悪いわ。


 サジタリウスとスコルピオスの二伯爵と繋がっていたことが判明したことで、キューズの当面の足取りは予測できる。北上してカプリコーン領を抜けて、彼らが立てこもっている領地へと向かったのだろう。

 だけど下手をすれば内乱の激戦地となってしまう可能性があり、何より知り得た全ての情報を渡していなかったことから、あの地に転移装置があるとは考え難い。


 それでもあえてサジタリウス領を目指したのは、他の場所に向かうことに比べて逃亡しやすかったことに加えて、現地が混乱していることを利用してその後の行方を追い辛くする、という理由もあったような気がする。


 そうなると向かう先はウィスシーの反対側、西岸方面だろうか。

 あ、首都を含めた国や大公家の直轄地があるのは湖の東側になるよ。裏を突いてこちらに戻ってくるという流れもなくはないけれど、それなら最初からそちらへ行く方が手っ取り早いはず。

 さすがに手間と時間がかかり過ぎることになるので、ここは素直に首都から遠ざかっていると考えるべきだろうね。


 研究ノートによれば、西岸方面に残っている遺跡と思しき代物は全部で四つ。レオ領に二つ、ヴァルゴ領とリーブラ領にそれぞれ一つだ。

 同じタカ派だったレオ領のどちらかが本命のように思えるが、それならば既に転移装置を発見して浮遊島へと至っていてもおかしくはない。

 手が出しづらかった領地にあったと見る方が自然だろう。


 それにしてもヴァルゴ領とリーブラ領とはね……。

 ジーナちゃんとライレンティアちゃんの地元じゃないのさ!


 彼女たちに協力を求めるかどうかで、物語の展開が大きく変化するような気がする。

 ついでに兄さまやジャグ公子たちまで引っ付いてきそうだし……。


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― 新着の感想 ―
[一言] >ネタばらしは悪役の美学ではないのか!? >秘密から何から全てを暴露する勢いで記載しておいてくれればよかったのに! 開発「この時点ではまだ、表の問題を追いかけてもらいたくて、本当の目的とか…
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