表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第四十四章 ポートル学園での闘争

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

723/933

723 こいつ、怪しい!

 このように波乱万丈な様相を呈してきたリュカリュカちゃんの学園生活だけれど、実はボクが最も警戒している存在が彼らとは別にいた。

 その人物とは、実践魔法のキューズ教官だ。


 なぜ警戒しているのか。まず、出身地から来歴に至るまで全てが謎という怪しさ大爆発なバックグラウンド。

 よくそれで貴族の子弟が通うポートル学園の教官に慣れたものだと思うが、これにはタカ派によるゴリ押しと、本人の並外れた魔法戦闘力があってのことだった。


「かなり大きな騒動だったらしくてね。当時の役員が書いた記録が生徒会室に残っていたはずだよ」


 生徒会室でトウィン兄さまからこっそり見せてくれた記録によると、他の教官志望の受験者たちどころか試験官だった者たちすらも圧倒的な力でねじ伏せてしまったのだそうだ。

 これによりキューズ教官はその実力を見せつけることができたのだが、同時に危険視されることにもなる。


 これを覆したのが彼を後押ししていたタカ派貴族たちだ。連中がこぞって「問題を起こした時には我々が責任を取る」と言い張ったため、学園側もそれ以上強硬に反対することもできなくなり、なし崩し的な調子でキューズの教官着任が決定したのだという。


 このように明らかにタカ派と関係のある人物なのだが、教官になって以降は両者の交流はピタリと止まっていた。

 それどころか出身も定かではないくせに偉そうに注意してくる口うるさい教官として、タカ派貴族の子弟たちからは疎まれているほどだった。


「ポートル学園の教官になったことで、縁が切れてしまっているのではないのかい?」


 兄さまがそう考えてしまうのも仕方がないというものだろう。

 が、ボクやジェミニ侯爵たちは知っている。魔法研究所に所属していたサジタリウス領出身の魔法使いがその行方を絶っており、さらにはレオ領出身の魔法使いの不手際によってその痕跡すら辿れないようにされていることを。


「つまり学園生に嫌われているのは、私たちのような疑いの目を向ける者の意識をそらすためだというのかい?」

「はい。恐らくは当主世代とは未だにしっかりと太いパイプで繋がっているのだと思います」


 もっとも、仮に彼やその一党が謎の第三者的な存在だとすると、お互いがお互いを利用し合っている、と思い込んでいる関係でしかないかもしれない。


 加えて、ストレイキャッツの件や魔物誘導については『武闘都市ヴァジュラ』も一枚噛んでいるかもしれない。タカ派という舞台人形の操り糸の奪い合いがどうなっているのかについても、慎重に見極める必要があるだろう。


「目に見えることだけが全てではない、ということか……。ただ、その点を加味してもリュカリュカは最初からキューズ教官のことを疑っていたように思えるのだけれど?」


 あら、兄さま。そこを聞いてしまいますか。


「だって、昼の最中から大振りのローブを着込んでいて、その上顔が見えないほど深くフードを被っているだなんて、どう見ても怪しいではありませんか」


 その格好を当然のものだと認識している兄さまはじめ学園関係者の意識を疑いたくなるレベルで、キューズの姿は胡散臭いものだった。

 あと、姿を消したサジタリウス領出身の魔法使いも同様な格好をしていたようだし、関連があるとみて間違いないと思う。


 なによりボクたちは『土卿王国ジオグランド』と『火卿帝国フレイムタン』で続けざまにローブ姿の人物の悪事に巻き込まれている。同様の存在がこの『水卿公国アキューエリオス』で悪事を企んでいるとしても不思議ではない。


「それと兄さま。ここだけの話にして欲しいのですが、件の魔法使いが姿を消した時期とキューズが教官としてポートル学園に着任した時期がほぼ一致するのです」


 こちらはジェミニ侯爵家が独自に調べたものだけではなく、大公様の名で公国の暗部が調査した結果でもあるので極めて信頼の高い情報だと言えるだろう。

 いや、それにもかかわらず彼の人物とキューズ教官が同一人物か否かを突き止めることができなかったことに懸念を抱くべきなのかも。


「国までもが密かに動いているのか……」


 大公様が指示を出していることは伝えられていたはずなのだけれどね。兄さまにはまだ現実味のある出来事として理解できていなかったのかもしれない。


 まあ、下手をすれば国を割っての大戦(おおいくさ)になる可能性だってあるからね。いくらトウィン兄さまが次期『十一臣』の一人だとは言っても、今はまだ学生なのだ。

 しかも秘密にされていることも多いとなれば、全体像を把握できていななくても仕方がないだろう。


 考えてみれば、リアルで優華(ボク)が国の政策にかかわっているようなものなのよね。

 うわー……。お偉い政治家のおじさんたちに囲まれている優華(じぶん)の姿を想像してしまい、思わず鳥肌が立ってしまった。


「兄さま、大変だと思いますけれど頑張ってくださいね!」

「うん?あ、ああ。頑張るよ」


 唐突な応援に困惑しながらも応えてくれるトウィン兄さまは、本当にいい人だと思うよ。これで恋愛方面の天然朴念仁がなければねえ……。

 まあ、ジーナちゃんのことは徐々に意識し始めているようであるし、侯爵様もお妃さまも身分にこだわるような人ではないから、後はそれこそ当人たちの頑張り次第だろうね。


 下手に口を出して余計にこじれてしまった、なんてことになっては目も当てられないので、本来イレギュラーなボクは部外者らしくモブっぽい立ち位置で静かに成り行きを見守りますですよ。


「話を戻すけれど、キューズ教官を警戒するとして、具体的にリュカリュカはどのように対処するつもりかな?」

「一対一で彼と会わないとか、常に人目のある場所に居るようにする、などでしょうか」

「こちらから仕掛けるつもりはないのかい?」

「仕掛けるも何も、こちらから動けるほどの情報が揃っていませんよ。あちらの実力すらも不明なのですから」


 武闘と魔法という違いはあれど、もしも彼にシドウ教官並みの強さがあるとすれば一対一での戦いになればまずボクに勝ち目はないからねえ。

 タカ派との距離を取っていると見せかけるためなのか、授業を機に嫌がらせの真似事をしてこないことだけが救いだわ。


 悪事の尻尾を掴むことができればいいのだけれど、コソコソとかなり用心深く動いているようだからそれもまた難しそうだ。

 むしろテニーレ嬢たちが盛大にやらかして馬脚をあらわにする方が確率としては高いかもしれないです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ