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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第四十三章 今さらジャンル変更とかできません

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718 学園内での攻防

 あのペン破壊事件から、テニーレ嬢たち魔改造ドレス軍団からの嫌がらせの標的はボク自身へと変わることになった。

 もっとも、そうせざるを得なくなったというのが実際のところだったりする。


 さすがに物を壊されるのは勘弁なので、こちらの私物は全てアイテムボックスに収納しておくことにしたのだ。

 ふっふっふ。冒険者の、とりわけプレイヤーのアイテムボックスはチート級な性能だからね。学園で使用する私物を持ち運ぶくらい楽勝なのです。

 いくら嫌がらせをしたくても壊せるアイテムを手に入れられなければどうしようもない。


 一応、座学の授業で使っている机と椅子は学園生一人一人にそれぞれ貸し与えられている物なので個人の物といえないこともない。

 が、完全な私物ではないから効果が薄いと考えたのか、それとも備品扱いの物に手を出すことで学園からにらまれるのを嫌ったのか、詳しい理由は不明だがそれらが破壊されるようなことにはならなかったのだった。

 まさか、背景の一部扱いで非破壊オブジェクト設定だった、なんてことはないですよね?


 そして、ボクに対して危害を加えようとする考えを抱いたことで、魔改造ドレス軍団は明確に『敵』としてゲームシステムに認識されるようになる。


 さて、ゲームシステム繋がりでいくつか思いだして欲しいことがあります。


 一つ目、一部イベント中や特殊な場所を除いて、ミニマップが表示されていること。

 ポートル学園の敷地面積は広く道に迷わないようにという運営の配慮なのか、問題なく使用することができていた。


 二つ目、ボクの持っている技能の中に、敵性存在の居場所を察知することができる〔警戒〕と、こちらの存在を察知され難くなる〔気配遮断〕があること。


 つまりですね、その気になればこちらからは彼女たちの居場所が丸見えにできてしまう上に、あちらからは見つけられないという状態にすることができてしまうという……。

 仮にチートだズルだと非難されても否定しきれないかも。

 まあ、わざわざ手を抜いて痛い思いも嫌な思いもしたくはないので、全力で活用したのですけれどね。以下、その結果です。


 ケースその一、晴れ時々水。

 『OAW』内は基本的に常春の気候であり、舞台となるアンクゥワー大陸では大きな差異はない。もちろん、『土卿王国ジオグランド』の国土の大半を占める険しい山地や、『火卿帝国フレイムタン』中央に広がる『聖域』と呼ばれている深い森などのでは独自の気候となっているけれど。


 そんな過ごしやすい気温ではあるが、あくまでそれは平常であれば、という但し書きが付くものでもある。ひとたび雨などで濡れてしまえば、当たり前のように寒く感じるし、対処が悪ければ風邪などの病気となってしまうことだってある。


 長々と説明してきたが、要するに「濡れる」ということは普段の生活を行う上では歓迎されるものではなく、だからこそ嫌がらせとしては効果的だということになる。

 さて、ラブコメテイストなラッキー?スケベイベントを除いて、ドラマや漫画など創作物で全身濡れ鼠のびしょ濡れになってしまう展開にはいくつかのパターンがあると思う。


 一、トイレの個室に入っている際にホース等で水をかけられてしまう。

 二、校舎のそばを歩いている時などに二階や三階の窓から捨てられた水がかかる。

 三、事故を含めてプールに落ちる。

 以上の三つなどは有名どころかしらね。


 ポートル学園ではそもそもプールがないため三つ目は却下です。

 次にさすがにトイレはあるけれど、ゲーム内ということで利用することはないので一つ目も破棄されることになる。まあ、それ以前に悪質な上に故意的過ぎて、事故だと言い張ることができないという理由もあったりする。


 そんな訳で消去法的に残された、二つ目の上階の窓から水をかけられる、という事態に巻き込まれることになったのだけれど……。


 わずか数メートル程度とは言え、階下を歩く人に向かってバッチリなタイミングで器に入った水を浴びせかけるというのは、なかなかに難しいことだったらしい。

 色々と理由をつけて誘導された場所には、上階に教室に潜んで水をぶちまける実行犯役の子――一人では持ち上げられないのか三人だった――を始め、タイミングを図る役の子や、指示を出す役の子などが植栽の陰に隠れていたのだった。


 そんな大人数を配置するくらいなら、手紙を置いておくとか何か確実に立ち止まる方法を考えなさいよ!とこの時点で既に突っ込みどころが満載なのだが、彼女たちの計画には致命的な欠点があった。


「これ、避けて歩いちゃダメなのかなあ……」


 思わず小声で呟いてしまう。

 多分、何度も繰り返し練習したのだろう。地面がね、一か所だけびちゃびちゃに濡れていたのだ。

 いや、せめて乾かすくらいのことはしておきなさいよ。もはや居場所が察知できるとかそれ以前の問題だと思う……。


「今日もいい天気ですね」


 などとわざとらしいにもほどがある台詞を口にしながら見上げてみれば、案の定濡れた地面の真上に位置する箇所の窓だけが不自然に開いていますね。

 今の行動で「ま、まさかこちらの計画がバレているというのか!?」と気付いてくれれば良かったのだけれど、そんな察しのいい子はいなかったのか、ただ沈黙を続けるだけだった。


 余談ですが、魔法を使えば簡単なことなのでは?と疑問に思った人もいるのではないでしょうかね。ボク自身そう考えたくちです。

 しかし結果から言えば、そう都合よく便利に使えるものではない、ということになる。


 まず〔水属性魔法〕は攻撃に使用するためのものであり、どんなにこめるMPを少なくしても命中すればダメージを与えてしまう。


 逆に〔生活魔法〕で使用できる【湧水】であれば、以前ボクがクンビーラ公主様や宰相さん(ミルファパパ)にパシャっとやったようにダメージなしで当てることもできるのだが、こちらは何かしらの容器に入れないとすぐに乾いてしまう、という特徴がある。

 そのため、びしょ濡れにして「まあ、なんてみっともない姿なのでしょう!おーっほっほっほ!」と笑いものにしたい彼女たちには不向きとなってしまうのだ。


「付き合いきれないわ……」


 あまりにも穴だらけの計画に、回れ右をしてその場から立ち去ることにしたボク。

 背後から聞こえてくるお嬢様たちの罵声と悲鳴はまるっとスルーされることになるのだった。


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