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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第四十三章 今さらジャンル変更とかできません

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715 二人の出会い

「で、でも、お二人も素晴らしい成績を維持されていますよね!」


 このままではボクの精神的ダメージが計り知れないことになってしまいそうだと、無理矢理会話の流れをライレンティアちゃんとジーナちゃんの二人へと向ける。

 話題自体を変更することができないのであれば、その標的をすり替えるのみ!

 「もはやこれまで!死なばもろとも!」などと物騒なことは言わないけれど、こうなれば二人にも恥ずかしい思いをしてもらおうではありませんか。


「わ、私は幼い頃よりそういう教育を受けてきたのだもの。このくらいのことができなければむしろ恥というものよ」


 とか何とか言いながら、頬を桜色に染めてふいっとあらぬ方を向くライレンティアちゃん。そんな表情ですら思わず見惚れてしまいそうになるのだから美少女って強い。

 こちらの狙った通りになっているはずなのに、なぜだか逆に痛烈なカウンターを食らってしまった気分だわ。


 ……コホン!

 気を取り直して、もう一人の美少女はどんな反応を見せてくれるのかな?


「わ、私は自分の成果というよりもライレンティア様やお友だちの皆、そしてトウィン様が根気強く熱心に指導してくださったお陰です」


 ぐふぅ……。ライレンティアちゃんを真っ先に挙げてはいたけれど、最後に登場した兄さまに対する熱量が全てを物語っていますよ、ジーナちゃん。

 彼女の頬はライレンティアちゃんとはまた違った理由で桃色に染まっていた。

 ぐぬぬ……。まさかここで恋する乙女モードを発動してくるとは。片割れというか相方となる兄さまがいないのですっかり油断をしていたわ。


 それにしても続けざまに叩きのめしてくるではないですか。もしかしてこの子たち容赦がない?

 単にボクが自滅しただけ、という意見は右耳から左耳へとそのままスルーいたしますのであしからず。


 しかしながらこのまま話題が続けば、ボクに致命傷を超える(オーバーキル)ダメージが入ることは確実だ。

 ここは戦略的撤退を計るため速やかに話題をチェンジです。

 女の子同士の会話など基本的には取り留めのないものばかりだからね。多少強引であっても話が変わることはよくあることで、違和感を持たれるようなことはないはず。


「ところで、ライレンティア様とジーナ様はどうようなきっかけがあって知り合いになられたのでしょう?」

「……あからさまな話題の切り替えですわね」

「ここまで露骨だと、先ほどの受け答えに何か不味いものがあったのではないかと心配になります……」


 あっれー?

 どうしてだか怪しまれてしまっているような?


「もしかして、第三者には知られたくはないことなのでしょうか?」

「いえ、そういうことではないのですが……」


 そんなボクの疑問に対して、苦笑いどころか頬を引きつらせかけるジーナちゃんと、ちょっぴりジト目になっているライレンティアちゃんです。

 いや、完全に的外れなものだということは重々承知しておりますですよ。

 ただ、ここまで見事に流れを誘導できないことに、ショックを覚えてしまうということもある訳でして……。

 若さゆえの過ちを認めたくない某仮面の人のごとく、この時のボクは自分の失敗から目をそらすことで手いっぱいとなってしまっていたのだった。


 まあ、すぐに開き直るのだけれどね。


「差支えがないのであれば、お二人が出会った時のお話を聞かせてくださいませんか?学園で最初に仲良くなったライレンティア様とジーナ様のことをもっと知りたいんです」


 これは心の底からの本音だ。これから学園内で立ち回っていくために、二人についての情報が必要不可欠だと考えてしまっていることへ罪悪感を抱くほどに。


「出会い、ですか……」

「隠すようなことではないから話すことは構いませんけれど、リュカリュカ様が期待しているほど面白いものではありませんわよ」


 そう前置きしてから、当時のことを思い出すように話し始める二人。


「ライレンティア様に最初にお会いしたのは五歳の頃だったように思います」

「あれは確か、ヴァルゴ領で行われたウィスシーの水運を利用した交易の話し合いに場に出席した時のことだったかしら」


 え?そんなに小さな時からライレンティアちゃんは政治や経済の会合に参加していたの!?


「そんなはずがないでしょう。会合に参加していたのはお父様ですわ。私はそろそろ見識を広めるべきだと言われて、訳も分からずに同行していただけです」

「ふふふ。そういえばあの時もそのようなことを話されていましたね」


 一方のジーナちゃんはというと、ヴァルゴ領主の傍系のそのまた親族に位置する下級貴族の娘に当たる彼女は、参加者や招待客が過不足なく過ごすことができるように親戚の女性たちと一緒になってあれやこれやの雑用を熟していたのだとか。


「私の家ほどになりますと、貴族と言ってもほとんど名ばかりのようなものですから。自分たちでできることは全て自分たちでするというのが当たり前の生活でした」


 なるほど。彼女の朴訥(ぼくとつ)で家庭的な面はそうした環境で育まれてきたものだったのか。


 余談ですが、ウィスシーに接している領は北から時計回りでサジタリウス領、カプリコーン領、首都アクエリオスのある大公領、ピスケス領、アリエス領、レオ領、ヴァルゴ領、リーブラ領、スコルピオス領となっております。見事なまでに派閥が入り乱れているわ。


 その日、話し合いに熱が入り過ぎて大人たちが目を離した隙に会場となっている部屋から抜け出してしまったライレンティアちゃんは、食事の準備やシーツの洗濯などに走り回っていた同じ年頃のジーナちゃんを発見し、捕獲。強引に一日中連れ回すことになったのだとか。


「幼い頃のライレンティア様は活発だったのですね。今の落ち着いた雰囲気からは想像し難いです」

「率直に我儘と言ってくださっても構いませんわ。実際そのことでジーナ様にご迷惑をおかけすることになったのですから」


 当然のように二人、特にジーナちゃんが後からこっぴどく怒られる羽目になってしまったそうだ。

 いくら逆らうことができなかったとしても誰に何の一言もなくいなくなってしまうと、訳の分からないまま残された人にしわ寄せがいくことになるからねえ。

 一方、ライレンティアちゃんも誰に何の一言も言わずにいなくなってしまったことから、すわ誘拐か犯罪に巻き込まれたのかと大騒ぎになってしまう直前だったらしい。


 その後も色々とあったのだけれど、何とか二人で乗り越えて身分差はあってもお互い大切なお友だちとなることができたのだとか。


「このことがきっかけとなり、私は他人を(おもんばか)ることの大切さを知ることができたのです。苦い思い出ではありますが、大切な私の原点と言える出来事でした」


 思い出を改めて噛みしめるように言うライレンティアちゃんに、ジーナちゃんが優しい微笑みを浮かべている。

 美少女二人の麗しい友情。絵になりますねえ。


 ただ、一点だけ突っ込みを入れたい。

 回想の中のライレンティアちゃんの立場に来るのは、普通ヒーローとなる人物の役割ではないのかな!?


リュカリュカちゃんの開き直りが早いのは、「ゲームの中の出来事であり、いざとなればリセットすることもできる」と無意識の内に考えているからです。


もっとも、多少の不利益を被った程度ではリセットを選択することはないでしょうが。

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― 新着の感想 ―
[一言] >見事なまでに派閥が入り乱れているわ。  どっかの派閥がバカをやるのに集まりにくくて、他の派閥が監視し合う領地の分散は、内向きには最適ですよねぇ。 内向きには。  外(国)からの侵攻をされ…
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