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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第四十三章 今さらジャンル変更とかできません

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707 やっぱり乙女ゲームなんですか!?

 ポートル学園のカリキュラムは十五歳からの基本三年制だが、卒業に関しては初年度の基礎的な学習内容を習得できた時点で資格を得ることができるようになっていた。

 これは言ってみれば強制的に通わされることになる貴族の子息令嬢向けの救済措置のようなものだ。


 例えば御令嬢の皆様方。『OAW』が中世欧州風の世界観だからか、ローティーンやミドルティーンでの婚約や結婚はざらにある。

 そのため、長々と学園に通っていては婚期を逃してしまう、ということも起こりえるという訳。


 しかし、義務として通わされているというのに卒業できなかったとなれば外聞が悪い。何より対象者が面子を大事にする貴族だということも、この点に拍車をかけることになる。

 苦肉の策として、一年次の学習課程を修了することができれば卒業資格を与えるということになったのだった。


 ちなみに飛び級はないので、ボクのような編入組を除いて基本的には一年間は必ず在学しなくてはいけないことになっている。

 この部分を掘り下げていくと本当にきりがないくらいに様々な理由が飛び出してきそうなので、説明が必要なった際にその都度解説していくことにするね。


 さて、御令嬢を中心とした若者たちの婚期確保こそがポートル学園の卒業資格が簡単に取得できてしまう一番の要因ではある。

 これに間違いはないのだけれど、それだけではなかったりするのがこの問題の闇が深いところだ。


「……ローガー様、いくら志望先が騎士団や軍部といった軒並み体が資本の部署とはいえ、正直この成績はどうなのだと言わざるを得ません」

「ぐっ……。す、すまん」


 このように一部勉強嫌いなおバカちゃんがいるため、難易度を下げてやらないといつまでたっても卒業出来ないということになってしまうのです。


「とにかく、ローガー様は授業に出ながら基礎問題を徹底的に反復練習してください」


 まあ、深くはあっても別の問題と絡みあったりはしていないし、学園内部でことが収まっている間ならば他所へと波及するようなこともない。

 よって対処が困難を極めるまでにはならないことは救いかな。


「授業を聞かなくてもいいのか?」

「理解できないどころか、子守唄代わりにしかならないなら聞くだけ無駄というものです。安心してください。基礎部分が分かるようになれば、すぐに今の授業内容に追いつくことだってできますから」

「一兵卒で終わるならばともかく、のし上がりたいのであれば勉学も必要だと教えただろう」

「失礼ですが、ミニス様も全体としては人のことをとやかく言えるような成績ではありませんよ。武闘を始めとして体を動かす科目は全て壊滅的ですよね?」


 勉強嫌いがいる一方で、運動嫌いなもやしっ子までいるのだから始末に悪い。


「む……。だが、生兵法は怪我の元だともいうぞ。それに私は元より文官志望なのだから、体力など必要ないだろう」

「何も前線へ出て戦えと言っているわけではないですよ。ですが相手の一撃を躱してその足で逃げ切ることができるのと、そうでないのとでは生存率は雲泥の差となります。それと、どうやら勘違いなさっているようですが、文官の仕事というものはあれでいて体力勝負なところが多々あるのですよ。文字を書き続けることも、関係者全員を納得させられる弁を打つのも、体力があってこそできることです」

「まったくもう。二人とも、それって僕が今まで何度も繰り返して言ってきたことですよ」

「スチュアート様……。問題と答えの全てを暗記してしまえばテストでは良い点を取ることはできるかもしれませんけれど、本当に理解したとは言い難いですよ」


 なまじ元の出来がいいと、楽な方へと舵を切りやすくなるのよね。


「うっ……。どうしてそのことを……」

「侍従とはいわば縁の下の力持ちです。覚えなくてはいけないことが多岐に渡るので、まずは記憶してしまうという癖がついてしまっているのでしょうが、それだけでは結局上辺だけしか見ていないことになります。特にこれからは応用を必要としたりさらに一歩先に進めたりすることが求められるはず。噛み砕いて自分の血肉としておかなければ行き詰ってしまいますよ」


 友人のことを気に掛けることはいいけれど、自分のことを棚に上げてというのはいただけない。

 反感を持たれることを覚悟で、それぞれの問題点を指摘してあげたのだ。この際しっかりと向き合ってもらいたいものだわね。


 リアルの現代ニポンのようなある種実力主義社会ならばともかく、こちらでは縁故や血縁による役職の相続がごくごく普通に行われている。

 つまりは、将来的にこの三名が『水卿公国アキューエリオス』の要職に就く可能性は高いということになる。


 バカ公子の替えが効かない――残念ながら隠し子などを含めて大公様にジャグ公子以外の子どもはいないとのことだった――のであれば、せめて側近ともいえる位置に居ることになるだろう三人には暴走を食い止めるストッパー役になってもらわないと困るのだ。


 え?ちょっぴり顔なじみになって適度な距離を保つ方針はどうなった?

 ……最初はね、確かにそうしたかったの。

 でもさ、


「やれやれ。揃いお揃ってその体たらくとはな。先が思いやられるぞ」

「……公子様は論外ですけれど」

「な、なんだと!?」

「耳触りの良い言葉しか言わないお調子者の太鼓持ちばかりを侍らしている時点でお話になりません。現実を見られるようになってから出直してきてください」


 一番の問題児がこの有様なので。これ以上頭に乗らせないためにも、味方を切り崩すことも含めて三人を取り込むことにした、という訳です。編入初日の放課後に方針転換を図らなくてはいけなくなったことには、思うところがないことはないのだけれど……。


 それにしても、これまで部屋の隅で我関せずという態度を貫いていたというのに、開口一番いきなり皮肉を述べ始めるのだからジャグ公子にも困ったものだ。

 まあ、その分三人との間に溝ができたようなので、結果オーライな展開ではある。


 とはいえ、完全に仲違いしてしまうと側近として取り上げられなくなってしまうかもしれない。唯我独尊の気質がある彼は孤立させてはいけないタイプだと思う。

 今でさえ周囲の意見を聞かない傾向がみられるのだ。長じればすべてを自分で決定しないと気が済まない暴君となる可能性だって十分にある。


 そんな特大の厄介者が目の前にドドンと居座っている訳ですが、なにやら部屋の外も騒がしくなってきたような。

 どうやら、そろそろ別の嵐がやって来そうな気配が濃厚になってきたみたい。


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― 新着の感想 ―
[一言] >そんな特大の厄介者が目の前にドドンと居座っている訳ですが、なにやら部屋の外も騒がしくなってきたような。 >どうやら、そろそろ別の嵐がやって来そうな気配が濃厚になってきたみたい  乙女ゲ…
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